データ消去の落とし穴: パージングで本当に安全?
セキュリティを知りたい
先生、「パージング」って何か教えてください。なんか、データを完全に消すすごい方法らしいんですけど…
セキュリティ研究家
そうだね、「パージング」はデータを消すためのとても強力な方法なんだ。データを消した後に、特別な技術を使っても復元できないようにするんだ。例えば、データの入っていた場所に何度も「0」を書き込んだり、ぐちゃぐちゃなデータを書き込んだりするんだよ。
セキュリティを知りたい
へえー!じゃあ、もう一回使うことはできないんですか?
セキュリティ研究家
そうなんだ。「パージング」をすると、ほとんどの場合、その記憶装置は使えなくなってしまうんだ。それだけ強力な方法だから、重要なデータを消すときに使われるんだよ。
パージングとは。
情報を守るための方法として、「パージング」というものがあります。パージングは、データを完全に消去する方法で、高度な技術を使っても復元できないようにします。具体的には、記録された情報を「0」やランダムな数字で何度も上書きしたり、専用の機械を使って磁気を消したりします。
しかし、情報の消去に関するアメリカのガイドラインである「NIST SP800-88 メディア・サニタイゼーションガイドライン」では、技術の進歩によって、パージングと、情報を消去する別の方法である「クリアリング」の差がなくなってきたと説明されています。そのため、このガイドラインでは、クリアリングとパージングは同じものとして扱われています。
一般的に、パージングを行うと、その記録媒体はその後使用できなくなります。
上記のガイドラインでは、情報を消去する方法として、他に3つの方法を合わせて、全部で4つの方法を示しています。
パージングとは?
– パージングとは?パージングは、不要になったデータを完全に消去し、復元を極めて困難にする強力なデータ消去の方法です。単にファイルを削除したり、ゴミ箱を空にしても、データ自体は記憶装置に残っているため、復元ソフトなどを使えば簡単にデータが復元されてしまう可能性があります。しかし、パージングはデータそのものを破壊してしまうため、高いレベルのセキュリティを必要とする場合に有効な手段となります。パージングには、大きく分けて2つの方法があります。一つは、ハードディスクやSSDなどの記憶媒体に「0」やランダムなデータパターンを繰り返し上書きする方法です。こうすることで、元のデータは上書きされ、復元は極めて困難になります。もう一つは、強力な磁力を用いて記憶媒体を初期化する消磁という方法です。消磁を行うことで、記憶媒体に記録されたデータは完全に破壊され、二度と復元することはできなくなります。パージングは、機密情報や個人情報など、漏洩のリスクが高いデータの取り扱いにおいて特に重要です。例えば、企業が使用していたパソコンを廃棄する場合や、個人でパソコンを売却する場合など、パージングを行うことで、情報漏洩のリスクを大幅に低減することができます。パージングは、通常のデータ削除よりも確実なデータ消去の方法として、セキュリティ対策の重要な要素となります。
パージングの方法 | 説明 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
上書き | 記憶媒体に「0」やランダムなデータパターンを繰り返し上書きする方法 | 比較的簡単に実行可能 | 上書き回数によっては復元の可能性が残る |
消磁 | 強力な磁力を用いて記憶媒体を初期化する | データ復元がほぼ不可能 | 機器の破損の可能性、高コスト |
クリアリングとの違いは?
– クリアリングとの違いは?
以前は、不要になったデータを消去する方法として、クリアリングとパージングという二つの方法が存在していました。クリアリングは、データをコンピュータ上で消したように見せることを指し、例えるなら、黒板に書かれた文字を黒板消しで消すようなイメージです。一方、パージングは、データ自体を完全に破壊することを意味し、例えるなら、紙に書かれた情報をシュレッダーにかけて細かく裁断するようなイメージです。
かつては、クリアリングは手軽にできる一方で、データ復元の可能性が残る方法、パージングは時間や費用がかかるものの、より安全性の高い方法とされていました。しかし、近年は記憶装置の技術革新が進み、従来のハードディスクに代わりSSDが普及してきました。SSDは、データの記録方式が複雑なため、クリアリングだけではデータが完全に消去されず、復元されてしまう可能性があることが分かってきました。
こうした背景から、データ消去に関する最新のガイドラインでは、クリアリングとパージングの区別を明確にせず、データの完全消去を目指すという点で同一のものとして扱うようになっています。そのため、重要な情報を扱う際には、従来のクリアリングではなく、より安全性の高いデータ消去ソフトウェアを使用したり、物理的に記憶装置を破壊したりすることが推奨されています。
項目 | クリアリング | パージング |
---|---|---|
イメージ | 黒板消しで消す | シュレッダーで裁断 |
安全性 | 低い | 高い |
コスト | 低い | 高い |
現状 | 区別されず、完全消去が推奨 |
パージングの落とし穴
– パージングの落とし穴パージングは、データを完全に消去するための強力な方法として知られていますが、いくつか注意すべき点があります。一つ目は、パージングを行うと、多くの場合、記録媒体が使用不能になることです。 パージングは、データを消去するために、記録媒体に対して繰り返しの上書きや消磁を行います。これらの処理は、記録媒体に物理的な負担をかけるため、寿命を縮める可能性があります。そのため、パージングを行った記録媒体は、再利用することが難しくなる場合が多いです。もし、記録媒体の再利用を前提とする場合は、パージングではなく、他のデータ消去方法を検討する必要があります。二つ目は、パージングの実施には、信頼できるソフトウェアや機器を使用する必要があるということです。 不適切なソフトウェアや機器を使用した場合、データが完全に消去されない可能性があります。また、ソフトウェアや機器の設定を適切に行わなかった場合も、同様のリスクがあります。そのため、パージングを行う際には、使用するソフトウェアや機器が信頼できるものであるか、適切な設定がなされているかを慎重に確認する必要があります。パージングは強力なデータ消去方法ですが、上記のような落とし穴があります。パージングを行う前に、これらの点を理解し、適切な方法で実施するよう心がけましょう。
パージングの落とし穴 | 内容 |
---|---|
記録媒体の寿命への影響 | パージングは記録媒体に物理的な負担をかけるため、寿命を縮める可能性があります。 パージングを行った記録媒体は、再利用することが難しくなる場合が多いです。 |
信頼性 | 不適切なソフトウェアや機器を使用した場合、データが完全に消去されない可能性があります。 ソフトウェアや機器の設定を適切に行わなかった場合も、同様のリスクがあります。 |
NISTによるデータ消去の分類
– NISTによるデータ消去の分類
データ消去は、不要になったデータが漏洩するリスクを軽減する上で非常に重要なプロセスです。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は、データ消去の方法をセキュリティレベルに応じて4つのカテゴリに分類しています。
1. -クリア-
クリアは、データへのアクセスを制限することを目的とした消去方法です。これは、データそのものを完全に消去するわけではなく、パスワードの設定やアクセス権の変更などによって、許可されていないユーザーがデータにアクセスすることを防ぎます。比較的簡単な方法ですが、専用のツールを使用すればデータを復元できる可能性もあるため、機密性の低いデータに適しています。
2. -パージ-
パージは、メディアをサニタイズし、データの復元を不可能にすることを目的とした消去方法です。この方法は、データが上書きされるため、クリアよりも安全性の高い方法とされています。ただし、専門的な技術やツールが必要となる場合があり、すべてのデータを完全に消去できない可能性も残ります。
3. -デストロイ-
デストロイは、メディアを物理的に破壊することを目的とした消去方法です。ハードディスクの破壊や溶解、焼却などがこれにあたります。データの復元は極めて困難となるため、最も安全性の高い方法と言えます。しかし、環境への影響やコスト面を考慮する必要があります。
4. -サニタイズ-
サニタイズは、組織のセキュリティ要件を満たすようにメディアから機密情報を削除することを目的とした消去方法です。
どの方法を選択するかは、データの機密性や重要度、組織のセキュリティポリシー、コスト、環境への影響などを総合的に判断する必要があります。データ消去は、情報セキュリティにおいて非常に重要な要素であるため、適切な方法を選択し、安全なデータ管理体制を構築する必要があります。
分類 | 説明 | セキュリティレベル | 備考 |
---|---|---|---|
クリア | データへのアクセス制限 (パスワード設定、アクセス権変更など) | 低い | 復元可能 |
パージ | メディアのサニタイズによるデータ復元不可能化 | 中程度 | 専門技術・ツール必要、完全消去できない可能性あり |
デストロイ | メディアの物理的破壊 (破壊、溶解、焼却など) | 高い | 環境への影響、コスト大 |
サニタイズ | 組織のセキュリティ要件を満たす機密情報削除 | 可変 | 組織のセキュリティポリシーに依存 |
まとめ
– まとめ
情報を完全に消去することは、企業にとっても、個人にとっても、安全を守る上で非常に大切です。不用になった記録媒体やデジタルデータには、想像以上に多くの機密情報が残っている可能性があります。もし、これらの情報が漏洩してしまったら、金銭的な損失や信頼の失墜など、取り返しのつかない事態になりかねません。
確実なデータ消去の方法の一つに、「パージング」と呼ばれる技術があります。これは、データが記録されている領域に、特殊なパターンを繰り返し上書きすることで、データを復元不可能な状態にする技術です。従来の削除やフォーマットといった方法では、データの痕跡が残ってしまい、復元されてしまう可能性がありましたが、パージングはより安全性の高い方法と言えます。
しかし、パージングにはいくつかの注意点も存在します。一つは、記録媒体によっては、パージングを行うことで使用できなくなってしまう可能性があることです。もう一つは、適切な設定でパージングを行わないと、データが完全に消去されず、復元されてしまうリスクがあることです。
そのため、データ消去を行う際には、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)が発行する「NIST SP 800-88」のような、最新のガイドラインを参考にすることが重要です。そして、自らの環境や目的に合った方法を、慎重に選択する必要があります。
データ消去は、セキュリティ対策のほんの一面に過ぎません。パスワードの管理やアクセス権限の設定など、基本的なセキュリティ対策を、日頃からしっかりと行うことが、情報漏洩のリスクを最小限に抑えるために、最も重要です。
項目 | 内容 |
---|---|
データ消去の重要性 | – 企業、個人問わず、情報漏洩防止に必須 – 不用な記録媒体やデジタルデータの適切な処理が必要 |
パージング | – データを復元不可能にする技術 – 特殊なパターンを繰り返し上書き – 従来の方法より安全性の高いデータ消去方法 |
パージングの注意点 | – 記録媒体によっては使用不能になる可能性 – 不適切な設定だとデータが完全に消去されないリスク |
データ消去の手順 | – 最新のガイドライン(例:NIST SP 800-88)を参考 – 環境や目的に合った方法を慎重に選択 |
その他のセキュリティ対策 | – パスワードの適切な管理 – アクセス権限の設定 – 基本的なセキュリティ対策の徹底 |