インターネットの基盤技術BGPとセキュリティ

インターネットの基盤技術BGPとセキュリティ

セキュリティを知りたい

先生、「BGP」ってなんですか?セキュリティを高めるために必要な知識だと聞いたのですが。

セキュリティ研究家

良い質問だね。「BGP」は、インターネットの道案内をしてくれる仕組みで、「経路情報交換プロトコル」とも呼ばれているんだ。インターネットの世界はたくさんのネットワークでできていて、「BGP」はそれぞれのネットワークが情報を交換することで、データを送り届ける最短ルートを決めているんだよ。

セキュリティを知りたい

インターネットの道案内役…それって、もし「BGP」がうまく動かなかったら、インターネットが使えなくなっちゃうってことですか?

セキュリティ研究家

その通り!実際、2021年に海外の大きな会社がインターネットから遮断されてしまった事件があったんだけど、これは「BGP」の設定ミスが原因だったと言われているんだ。セキュリティを高めるためには、「BGP」の仕組みを理解して、正しく設定する必要があるんだよ。

BGPとは。

安全性を高めるために、インターネットの道案内の仕組みである「BGP」について学びましょう。BGPは、インターネット上で情報をやり取りする際の経路を決めるための約束事です。インターネット上の様々なネットワークがBGPを使って互いに経路情報を交換し、情報の送り方を決めています。2021年にFacebookが利用できなくなった問題は、このBGPの経路設定のミスが原因でした。

BGPとは

BGPとは

– BGPとはインターネットは、世界中に広がる巨大なネットワークです。この広大なネットワークは、実は小さなネットワークがたくさん集まってできています。それぞれの小さなネットワークは独立して管理されていて、「自律システム」と呼ばれています。インターネット上で情報をやり取りするには、情報を発信元から受信先まで届けるための道順が必要です。この道順を決めるための仕組みが「ルーティング」であり、「BGP(Border Gateway Protocol)」はこのルーティングを行うための重要な役割を担っています。BGPは、異なる自律システム間で経路情報を交換するためのプロトコルです。それぞれの自律システムは、BGPを用いて他の自律システムと接続し、どの経路を通れば他のネットワークに到達できるかを共有します。この情報交換により、インターネット全体で効率的な経路が選択され、私たちがウェブサイトを閲覧したり、メールを送受信したりすることができるのです。BGPは、インターネットの安定性と信頼性を支える基盤技術の一つと言えるでしょう。インターネットの仕組みをより深く理解するためには、BGPの役割について学ぶことが重要です。

用語 説明
インターネット 多数の小さなネットワーク(自律システム)が接続して構成される巨大なネットワーク
自律システム 独立して管理される、ネットワークの単位
ルーティング 情報を発信元から受信先まで届けるための道順を決める仕組み
BGP (Border Gateway Protocol) 異なる自律システム間で経路情報を交換するためのプロトコル

BGPの仕組み

BGPの仕組み

– BGPの仕組み

BGPは、異なるネットワーク同士をつなぐインターネットの基盤となる技術です。複数のネットワークをまとめて管理する単位を「自律システム(AS)」と呼び、BGPはこのAS間で経路情報を交換することで、インターネット全体をつなぐ役割を担っています。

BGPでは、隣接するAS同士がTCPセッションと呼ばれる通信路を確立し、その上で経路情報を交換します。各ASは、自身が管理するネットワークへの経路を、他のASに伝達します。同時に、他のASから受け取った経路情報に基づいて、どの経路を使ってデータを送信するかを決定する「ルーティングテーブル」を構築します。

BGPの特徴は、単に距離が短い経路を選択するのではなく、ネットワーク管理者が設定したポリシーに基づいて経路を選択できる点です。例えば、セキュリティ上の懸念から特定のASを経由しないように設定したり、通信コストを抑えるために特定の経路を優先するように設定したりすることができます。このように、BGPは柔軟な経路制御を可能にすることで、インターネットの安定性と信頼性を支えています。

項目 説明
BGPの役割 異なるネットワーク同士(AS間)で経路情報を交換し、インターネット全体をつなぐ
AS(自律システム) 複数のネットワークをまとめて管理する単位
経路情報の交換方法 隣接するAS同士がTCPセッションを確立し、経路情報を交換
ルーティングテーブル 他のASから受け取った経路情報に基づいて、データ送信に使う経路を決定するための表
BGPの特徴 ネットワーク管理者が設定したポリシーに基づいて経路を選択できる(距離だけでなく、セキュリティやコストも考慮可能)

BGPの脆弱性

BGPの脆弱性

インターネット上で情報をやり取りする際に、情報を正しく届けるための経路情報を扱う技術があります。この技術は、まるで手紙を届ける際に、宛先を見て適切な郵便局へ転送していく仕組みのようなものです。しかし、この重要な仕組みにも脆弱性が存在し、悪意のある攻撃者によって経路情報が書き換えられてしまう危険性があります。これは、手紙の宛先を書き換えて、違う場所に届けてしまうようなものです。このような攻撃の一つに、経路ハイジャックがあります。これは、攻撃者が偽の経路情報を流し込むことで、本来とは異なる場所に情報を転送させてしまう攻撃です。手紙の例で言えば、本来届けるべき家とは違う場所に、手紙を届けてしまうようなものです。また、経路漏洩という問題も存在します。これは、設定ミスなどにより、本来秘密にするべき経路情報が漏れてしまう現象です。手紙の例で言えば、配達ルートの情報が漏れてしまい、誰でも手紙の行き先を辿れるようになってしまうようなものです。これらの問題は、情報の遅延や遮断を引き起こすだけでなく、個人情報や企業秘密が漏洩してしまう重大な事態にも繋がりかねません。安心安全なインターネットを守るためには、このような脅威が存在することを認識し、対策を講じていく必要があります。

脅威 説明 手紙の例え
経路ハイジャック 攻撃者が偽の経路情報を流し込むことで、情報を本来とは異なる場所に転送させる攻撃 手紙の宛先を書き換えて、違う場所に届けてしまう
経路漏洩 設定ミスなどにより、本来秘密にするべき経路情報が漏れてしまう現象 配達ルートの情報が漏れてしまい、誰でも手紙の行き先を辿れるようになってしまう

Facebookの大規模障害

Facebookの大規模障害

2021年10月、多くの人が利用する交流サイトであるFacebookで、世界規模での大規模な接続障害が発生しました。この障害の原因は、インターネットの通信経路を制御する重要な仕組みであるBGPの、誤った設定によるものでした。
Facebookの技術者が、データセンターと呼ばれる、大量の情報を保管・処理する施設間での通信経路の変更作業を行った際に、誤って正しくない経路情報をBGPに伝えてしまったことが、今回の障害の引き金となりました。
この誤った情報は、まるで伝言ゲームのように世界中のネットワーク機器に拡散され、Facebookのドメイン名とIPアドレスを変換するDNSサーバーが、インターネット上からアクセスできない状態に陥りました。
その結果、Facebookだけでなく、傘下にある写真共有サイトやメッセージアプリなども含め、多くのサービスが数時間にわたって利用できなくなり、世界中に大きな影響が及びました。
この出来事は、BGPの設定ミスが、インターネット全体に影響を及ぼす可能性があることを如実に示す、象徴的な事例として、ネットワーク管理者たちの間で大きな注目を集めました。
今回の障害は、インターネットの基盤を支える技術の複雑さと、ひとつのミスがもたらす影響の大きさを、改めて私たちに突きつける結果となりました。

日付 出来事 原因 影響
2021年10月 Facebookで世界規模の接続障害発生 データセンター間の通信経路変更作業中のBGP設定ミス Facebookのサービス、傘下サービスが数時間利用不可に

BGPのセキュリティ対策

BGPのセキュリティ対策

インターネットの基幹を支える経路制御の仕組みであるBGPは、その重要性ゆえにセキュリティ対策が欠かせません。BGPのセキュリティを高めるためには、経路情報の送信元を認証し、不正な経路情報の伝播を防ぐ必要があります。

経路情報の送信元を認証するために、近年ではRPKI(Resource Public Key Infrastructure)という仕組みが注目されています。これは、インターネット上のリソースを管理する組織が、自身のAS番号と公開鍵を紐づけてデータベースに登録しておく仕組みです。BGPルータはこのデータベースを参照することで、経路情報が正当な送信元から発信されたものかどうかを検証できるようになります。

また、不正な経路情報の伝播を防ぐためには、経路フィルタリングが有効です。これは、受け取った経路情報が、送信元や内容に基づいて、本当に許可すべきものかどうかを判断し、不正な情報であれば破棄する仕組みです。具体的には、経路情報の送信元AS番号や経路の長さ、通過するAS番号などをチェックすることで、不正な経路情報の拡散を防ぎます。

BGPのセキュリティは、インターネット全体の安定運用に直結する重要な課題です。今後もRPKIや経路フィルタリングなどの技術進化や国際的な連携強化を通じて、より強固なセキュリティ対策が求められます。

BGPセキュリティ対策 内容 具体的な方法
経路情報の送信元認証 経路情報が正当な送信元から発信されたものかどうかを検証する RPKIを用いて、送信元のAS番号と公開鍵を照合する
不正な経路情報の伝播防止 受け取った経路情報が本当に許可すべきものかどうかを判断し、不正な情報であれば破棄する 送信元AS番号、経路の長さ、通過するAS番号などをチェックする経路フィルタリングを実施する
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