Kerberoasting攻撃から身を守るには
セキュリティを知りたい
先生、「Kerberoasting攻撃」ってなんですか?セキュリティの本で見かけたんですけど、よく分からなくて…
セキュリティ研究家
「Kerberoasting攻撃」は、簡単に言うと、コンピューターのネットワークでよく使われている「Kerberos認証」という仕組みの弱点をついた攻撃方法だよ。パスワードを盗み見て、もっとたくさんのコンピューターを乗っ取ろうとするんだ。
セキュリティを知りたい
パスワードを盗み見ることができるんですか?!でも、パスワードって複雑で長いものが推奨されてますよね?それでも盗み見ることができるんですか?
セキュリティ研究家
そうなんだ。複雑なパスワードでも、攻撃者はあの手この手でパスワードを盗もうとする。Kerberoasting攻撃では、パスワードを直接盗むのではなく、パスワードを解読するためのヒントになる情報を入手して、時間をかけてパスワードを解読するんだ。だから、複雑なパスワードを設定することは、攻撃を難しくする上でとても重要なんだよ。
Kerberoasting攻撃とは。
コンピュータの安全性を高めるために、今回は「ケルベロロースト攻撃」について説明します。ケルベロロースト攻撃とは、「Windows Active Directory」というシステムで使われている「Kerberos認証」という仕組みへの攻撃です。これは、盗み出した情報を使って、オフラインでパスワードを解読する攻撃です。攻撃者はまず、すでに不正侵入したコンピュータから、様々なサービスの識別子である「SPN」のリストを盗み出します。次に、この「SPN」と「TGT」と呼ばれるチケットを使って、「TGSサービスチケット」という別のチケットを要求します。あるいは、ネットワークを盗聴して、「TGSサービスチケット」を直接盗み出すこともあります。この「TGSサービスチケット」は暗号化されていますが、攻撃者は強力なコンピュータを使って、片っ端からパスワードを試す「ブルートフォース攻撃」をオフラインで行い、パスワードを解読します。解読したパスワードを使って、ネットワーク上の他のコンピュータへ侵入したり、より高い権限を手に入れたり、長期的にシステムに潜り込んだりします。ケルベロロースト攻撃には、「Rubeus」のような専用のツールが使われます。また、パスワードの解読には、「hashcat」や「JohnTheRipper」といったツールが使われます。この攻撃方法は、2014年にティム・メディン氏によって発見されました。
Kerberoasting攻撃とは
– Kerberoasting攻撃とは
Kerberoasting攻撃は、WindowsのActive Directoryという、組織内のユーザーやコンピューターの情報を管理するシステムを悪用した攻撃手法です。
Active Directoryでは、ユーザーが様々なサービスにアクセスする際に、Kerberosという認証プロトコルが使われています。このKerberosは、ユーザーがパスワードを入力しなくても安全にサービスを利用できるようにするための仕組みです。
Kerberoasting攻撃では、攻撃者はこのKerberosの仕組みを逆手に取ります。
攻撃者はまず、Active Directoryに対して、特定のサービスを利用するためのチケットを要求します。このチケットは、暗号化された形で攻撃者に渡されます。
重要なのは、このチケットの暗号化には、サービスアカウントのパスワードが使われているという点です。サービスアカウントとは、特定のサービスに割り当てられたアカウントのことです。
攻撃者は、入手したチケットをオフライン環境に持ち帰り、様々なパスワードを試しながらチケットの解読を試みます。もしチケットの解読に成功すれば、攻撃者はサービスアカウントのパスワードを手に入れることができます。
Kerberoasting攻撃の厄介な点は、Active Directoryとの直接的な通信が発生しないため、従来のセキュリティ対策では検知が難しいという点です。
そのため、Kerberoasting攻撃からシステムを守るためには、サービスアカウントのパスワードを複雑にする、定期的にパスワードを変更する、多要素認証を導入するなどの対策を講じる必要があります。
攻撃手法 | 概要 | 対策 |
---|---|---|
Kerberoasting攻撃 | WindowsのActive Directory環境において、Kerberos認証の仕組を悪用し、サービスアカウントのパスワードを盗み取る攻撃。Active Directoryとの直接的な通信が発生しないため、検知が難しい。 | – サービスアカウントのパスワードを複雑にする – 定期的にパスワードを変更する – 多要素認証を導入する |
攻撃の手順
– 攻撃の手順
攻撃者は、まるで建物を攻略するように、いくつかの段階を経て組織のシステムへの侵入を試みます。
まず、攻撃者はすでに不正アクセスされているアカウントを利用し、組織内の重要な情報が集まる場所、「Active Directory」の情報を探ります。特に狙うのは、「サービスプリンシパル名(SPN)」と呼ばれる、各サービスを識別する情報です。これは、建物で例えるなら、それぞれの部屋の鍵を開けるための情報に当たります。
次に、攻撃者は入手したSPNを悪用し、「Kerberosチケット保証チケット(TGT)」を用いて、組織の中枢システムや重要なサービスへアクセスするための「サービスチケット(TGS)」を要求します。このTGSは、サービスアカウントのパスワードの暗号化された情報を含んでいるため、攻撃者にとって非常に重要な情報となります。
攻撃者は、入手したTGSを外部の環境に持ち出し、様々な方法で解析を試みます。例えば、パスワードの組み合わせを総当たりで試す「ブルートフォース攻撃」などを用いて、サービスアカウントのパスワードの解読を目指します。もしパスワードが解読されてしまうと、攻撃者はそのサービスになりすまして、組織のシステムに侵入できてしまう危険性があります。
このように、攻撃者は段階的に組織のセキュリティの隙間を突こうとします。組織を守るためには、それぞれの段階での対策を講じることが重要です。
攻撃段階 | 攻撃内容 | 攻撃の目的 | 防御策のポイント |
---|---|---|---|
偵察 | 不正アクセスしたアカウントを利用し、Active Directoryの情報(特にSPN)を探る | 組織内の重要なサービスを特定し、攻撃対象を絞り込む |
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チケットの偽造 | 入手したSPNを悪用し、Kerberosチケット(TGT、TGS)を要求する | 組織の中枢システムや重要なサービスへのアクセス権を取得する |
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パスワードの解読 | 入手したTGSを外部環境に持ち出し、ブルートフォース攻撃などで解析を試みる | サービスアカウントのパスワードを解読し、組織のシステムに侵入する |
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攻撃の危険性
– 攻撃の危険性コンピューターシステムに対する攻撃は、個人や組織にとって深刻な脅威となっています。攻撃が成功すると、機密情報が盗まれたり、システムが破壊されたりするなど、大きな損害を被る可能性があります。攻撃の中でも、「Kerberoasting攻撃」と呼ばれる手法は、特に危険性が高いことで知られています。この攻撃は、Windowsネットワークで使用される認証システム「Kerberos」の脆弱性を突いたもので、攻撃者にシステムへの不正アクセスを許してしまう可能性があります。Kerberoasting攻撃が成功すると、攻撃者は「サービスアカウント」と呼ばれる特別なアカウントの権限を奪取することが可能になります。サービスアカウントは、システムの運用に必要な特定のタスクを実行するために使用されるアカウントであり、通常のユーザーアカウントよりも高い権限を持っていることが一般的です。攻撃者がサービスアカウントの権限を手に入れると、機密情報へのアクセスやシステムの制御など、本来であれば許可されていない操作を実行できるようになってしまいます。顧客情報や financial data などの重要なデータが盗まれたり、システムが改ざんされたりするなど、その被害は甚大なものになる可能性があります。Kerberoasting攻撃は、その性質上、検出が困難であることも大きな問題です。そのため、企業や組織は、Kerberoasting攻撃に対する適切な対策を講じることが重要です。具体的には、強力なパスワードを設定することや、多要素認証を導入することなどが有効な対策として挙げられます。システムのセキュリティ対策を強化し、攻撃から身を守るためには、攻撃の手口やその危険性について正しく理解することが重要です。
攻撃手法 | 危険性 | 被害 | 対策 |
---|---|---|---|
Kerberoasting攻撃 | – Windowsネットワークの認証システム「Kerberos」の脆弱性を突いた攻撃 – 攻撃者にシステムへの不正アクセスを許してしまう可能性 – サービスアカウントの権限を奪取される可能性 – 検出が困難 |
– 機密情報へのアクセス – システムの制御 – 顧客情報やfinancial dataなどの重要なデータの盗難 – システムの改ざん |
– 強力なパスワードの設定 – 多要素認証の導入 – システムのセキュリティ対策の強化 |
対策
– 対策
Kerberoasting攻撃からシステムを守るためには、いくつかの効果的な対策を組み合わせることが重要です。
まず、サービスアカウントのパスワードは、簡単には推測できないものに設定する必要があります。具体的には、パスワードの長さを十分に長く設定すること、数字や記号などを含めた複雑な組み合わせにすることが重要です。複雑なパスワードを設定することで、攻撃者がパスワードを解読するために必要な時間が飛躍的に増加し、攻撃を諦めさせる効果が期待できます。
次に、サービスアカウントには、業務に必要な最小限の権限だけを与えるようにしましょう。仮に、攻撃によってサービスアカウントのパスワードが盗まれてしまったとしても、権限を最小限に抑えておくことで、システム全体への影響を小さく抑えることができます。
さらに、パスワード以外の要素を用いた認証を導入することも有効です。例えば、スマートフォンに送信される認証コードを入力させる、生体認証を取り入れるなど、多要素認証を導入することで、パスワードの盗難だけによる不正アクセスを防ぐことができます。
これらの対策を組み合わせることで、Kerberoasting攻撃に対する防御を強化し、システムの安全性を高めることができます。
対策 | 詳細 | 効果 |
---|---|---|
強力なパスワードを設定する | – パスワードの長さを十分に長くする – 数字や記号などを含めた複雑な組み合わせにする |
攻撃者がパスワードを解読するために必要な時間が飛躍的に増加し、攻撃を諦めさせる効果 |
サービスアカウントの権限を最小限にする | 業務に必要な最小限の権限だけを与える | 仮に、攻撃によってサービスアカウントのパスワードが盗まれてしまったとしても、システム全体への影響を小さく抑える |
多要素認証の導入 | – スマートフォンに送信される認証コードを入力させる – 生体認証を取り入れる |
パスワードの盗難だけによる不正アクセスを防ぐ |
まとめ
– まとめ
WindowsのActive Directoryという、ユーザーやコンピューターの情報を管理する仕組みにおいて、Kerberoasting攻撃は深刻な脅威となっています。これは、攻撃者がシステムの脆弱性を突いて、重要な情報を不正に入手しようとする悪質な行為です。
システム管理者は、この攻撃の仕組みを正しく理解し、適切な対策を講じることで、システムを保護する責任があります。特に、サービスアカウントと呼ばれる、システム内部で様々な処理を行うための特別なアカウントのパスワード管理は非常に重要です。
具体的には、サービスアカウントのパスワードは定期的に変更すること、推測されにくい複雑なパスワードを設定することなど、セキュリティ対策を徹底する必要があります。
Kerberoasting攻撃からシステムを守るためには、管理者だけでなく、システムを利用する全ての人がセキュリティ意識を高め、協力していくことが重要です。
脅威 | 概要 | 対策 |
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Kerberoasting攻撃 | Windows Active Directoryの脆弱性を突き、サービスアカウントのパスワードなどの重要情報を不正に入手しようとする攻撃 |
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