情報セキュリティの世界:チャイニーズ・ウォール・モデルとは?
セキュリティを知りたい
『ブルーワ・ナッシュ・モデル』って、セキュリティを高めるための仕組みみたいだけど、どんなものかよくわからないな。
セキュリティ研究家
そうだね。『ブルーワ・ナッシュ・モデル』は、簡単に言うと、ある情報にアクセスした人は、それと相反する情報にはアクセスできないようにする仕組みだよ。例えば、A社の株を買ったら、今度はA社の株を売るアドバイスはできないようにする、といったイメージかな。
セキュリティを知りたい
なるほど。でも、なんでそんなことをする必要があるの?
セキュリティ研究家
それはね、例えば金融機関で、特定の会社の情報を扱う人が、その会社の株を売買するような場合に、自分の利益のために不正をしてしまう可能性があるからなんだ。そうした不正を防ぐために、『ブルーワ・ナッシュ・モデル』は有効なんだよ。
ブルーワ・ナッシュ・モデルとは。
情報を守るための考え方の一つに、「ブルーワ・ナッシュ・モデル」というものがあります。これは、1989年にブルーワ氏とナッシュ氏によって考え出された情報管理の方法です。別名「万里の長城モデル」とも呼ばれています。従来の情報管理方法は、主に国の機関や軍隊のシステムを想定して作られてきました。しかし、ブルーワ・ナッシュ・モデルは、企業、特に金融機関でお金になる情報を適切に管理するために作られました。
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、立場が異なる人々が同じ情報にアクセスすると問題が起きる場合に、情報をどのように扱うべきかを定めたものです。このモデルでは、情報はそれぞれグループに分けられます。それぞれのグループは、会社にとってどのような意味を持つ情報なのかを示す印が付けられます。そして、それぞれのグループは、利害関係が相反するグループに分類されます。
システムを使う人、つまり情報にアクセスする人は、たくさんの顧客の情報を見ることができます。しかし、例えば「銀行」というグループに属する顧客情報へのアクセスは制限され、複数の銀行の情報には同時にアクセスできません。システムを使う人は、最初はあらゆる情報にアクセスできますが、一度特定の情報にアクセスすると、その情報と利害関係が相反する情報にはアクセスできなくなります。
ブルーワ・ナッシュ・モデルの特徴は、誰がいつどんな情報にアクセスしたかを記録し、それによって情報へのアクセスを動的に変えるところです。ちなみに、金融機関で立場を利用した不正行為や、内部情報を使った取引を防ぐための考え方として、「万里の長城」という言葉自体は20世紀初頭から使われています。
金融機関における情報管理の要
– 金融機関における情報管理の要現代社会において、企業は膨大な量の情報を扱っています。特に金融機関では、顧客の預金残高や取引履歴、企業の財務諸表など、取り扱いに高い機密性が求められる情報が多数存在します。顧客から預かった大切な資産情報や、企業活動を支える重要な財務情報など、ひとたびこれらの情報が漏洩したり、不正にアクセスされたりすれば、金融機関の信頼は失墜し、社会全体に計り知れない影響が及ぶ可能性があります。このような事態を防ぐため、金融機関は高度な情報セキュリティ対策を講じる必要があります。その中核となる考え方が「ブルーワ・ナッシュ・モデル」です。これは、情報を守るべき対象として捉え、「機密性」「完全性」「可用性」という3つの要素をバランスよく維持することで、総合的な情報セキュリティを実現しようというものです。まず「機密性」とは、許可された者だけが情報にアクセスできる状態を指します。顧客情報へのアクセス権限を厳格に管理したり、情報を暗号化して不正アクセスから守ったりするなど、重要な情報を適切に保護する必要があります。次に「完全性」は、情報が正確かつ完全な状態で保たれていることを意味します。データ改ざんや破壊を防ぐため、常に情報の正確性を保証する仕組みが求められます。最後に「可用性」とは、許可された者が必要な時に情報にアクセスできる状態を指します。システム障害などで情報へのアクセスが遮断されないよう、安定したシステム運用や災害対策が重要になります。金融機関は、これらの要素をバランスよく実現することで、顧客や社会からの信頼を守り、安全な金融サービスを提供し続けることができます。
情報セキュリティ要素 | 説明 | 具体的な対策例 |
---|---|---|
機密性 | 許可された者だけが情報にアクセスできる状態 | – アクセス権限の厳格な管理 – 情報の暗号化 |
完全性 | 情報が正確かつ完全な状態で保たれていること | – データ改ざん・破壊の防止 – 情報の正確性を保証する仕組みの構築 |
可用性 | 許可された者が必要な時に情報にアクセスできる状態 | – 安定したシステム運用 – 災害対策 |
従来のモデルとの違い
従来のモデルとの違い
従来の情報セキュリティ対策の枠組みは、主に政府機関や軍隊の情報システムを守ることを目的としていました。例えば、ベル・ラパドゥラ・モデルやビバ・モデルなどが挙げられます。これらのモデルは、機密情報へのアクセス制御や情報の流れの制御に重点を置いており、政府や軍隊における情報の機密性、完全性、可用性を維持することに貢献してきました。しかし、金融機関など、顧客や取引先との関係で複雑な利害関係が発生する組織では、従来のモデルだけでは十分に対策できません。
金融機関は、顧客の預金情報や取引履歴など、非常に機密性の高い情報を扱っています。また、顧客や取引先との間には、従来のモデルでは想定されていなかった複雑な利害関係が存在する可能性があります。例えば、金融機関は、顧客の利益を最優先にすべきという義務と、自社の利益を追求すべきという義務との間で、常に板挟みの状態にあります。このような状況下では、従来のモデルでは想定されていなかった新たな脅威が発生する可能性があります。例えば、顧客情報を悪用した詐欺や、金融機関のシステムを利用したマネーロンダリングなどが挙げられます。また、金融機関は、顧客や取引先との信頼関係を維持するために、高いレベルの透明性と説明責任が求められます。しかし、従来のモデルでは、このような倫理的な側面や説明責任については十分に考慮されていませんでした。
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、このような金融機関特有の状況に対応するために開発された情報セキュリティモデルです。このモデルは、従来のモデルでは考慮されていなかった、利害相反や倫理的な側面、説明責任などを考慮に入れている点が特徴です。具体的には、ブルーワ・ナッシュ・モデルでは、情報セキュリティ対策を実施する際に、以下の3つの要素を考慮する必要があります。
1. 情報の機密性、完全性、可用性を確保すること
2. 顧客や取引先との利害相反を適切に管理すること
3. 高いレベルの透明性と説明責任を果たすこと
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、従来のモデルよりも、より包括的な情報セキュリティ対策の枠組みを提供することで、金融機関が直面する新たな脅威に対応しようとしています。
モデル | 目的 | 特徴 | 対象 |
---|---|---|---|
ベル・ラパドゥラ・モデル ビバ・モデルなど |
政府機関や軍隊の情報システム保護 | – 機密情報へのアクセス制御 – 情報の流れの制御 – 情報の機密性、完全性、可用性の維持 |
政府機関、軍隊 |
ブルーワ・ナッシュ・モデル | 金融機関特有の状況に対応 | – 情報の機密性、完全性、可用性の確保 – 顧客や取引先との利害相反の適切な管理 – 高いレベルの透明性と説明責任 – 倫理的な側面や説明責任を考慮 |
金融機関 |
チャイニーズ・ウォール:利益相反を防ぐ壁
– チャイニーズ・ウォール利益相反を防ぐ壁「チャイニーズ・ウォール・モデル」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、企業が顧客や取引先との間で公正さを保つために設ける、情報管理の仕組みです。まるで万里の長城のように、情報へのアクセスを厳しく制限することから、その名が付けられました。では、具体的にどのようにして利益相反を防ぐのでしょうか?例えば、証券会社を例に考えてみましょう。証券会社には、企業の情報を分析して株の売買を推奨する部署と、顧客から預かった資産を運用する部署があります。もし、これらの部署間で顧客情報や企業情報が自由に共有されてしまうと、どうなるでしょうか?企業分析を担当する部署が、特定の企業に関する重要な情報を知り、顧客に伝える前に、自分たちの利益のために、先に自社の資産運用に利用するかもしれません。これは、顧客に対する公平性を欠いた行為であり、利益相反を生み出す原因となります。そこで、「チャイニーズ・ウォール・モデル」の出番です。このモデルでは、情報を異なる種類に分類し、それぞれに高い壁を築くようにアクセス制限を設けます。先ほどの証券会社の例では、企業分析に関する情報は、顧客資産を運用する部署には一切開示されません。反対に、顧客の資産運用情報は、企業分析を行う部署には公開されません。このように、それぞれの部署が必要とする情報だけにアクセスを限定することで、情報漏洩や不正利用のリスクを最小限に抑え、顧客との信頼関係を守ることができるのです。
チャイニーズ・ウォール・モデルとは | 具体的な例 | メリット |
---|---|---|
企業が顧客や取引先との間で公正さを保つための情報管理の仕組み。情報へのアクセスを厳しく制限することで利益相反を防ぐ。 | 証券会社で、企業分析部署が得た情報を顧客に伝える前に、自社の資産運用に利用することを防ぐために、顧客資産運用部署との間に情報隔壁を設ける。 | 情報漏洩や不正利用のリスクを最小限に抑え、顧客との信頼関係を守ることができる。 |
アクセス履歴に基づく動的な制御
– アクセス履歴に基づく動的な制御ブルーワ・ナッシュ・モデルの最も大きな特徴は、過去の行動記録に基づいて、情報へのアクセスをリアルタイムで調整できる点にあります。これは、従来のアクセス制御とは一線を画す、より高度なセキュリティ対策と言えます。従来のアクセス制御では、あらかじめ決められたルールに基づいて、ユーザーのアクセス権限を「許可」または「拒否」の二元的に判断していました。しかし、ブルーワ・ナッシュ・モデルでは、ユーザーのアクセス履歴を記録し、その情報に基づいてアクセス権限を動的に変化させます。例えば、ある銀行の顧客情報にアクセスしたユーザーは、その後、競合関係にある他の銀行の顧客情報にアクセスすることができなくなります。これは、過去にアクセスした情報の内容と、これからアクセスしようとする情報の内容を照らし合わせて、利益相反の可能性があると判断された場合に、自動的にアクセスを制限する仕組みによるものです。このような動的なアクセス制御は、従来の手法では防ぎきれなかった、情報漏えいのリスクを大幅に低減することができます。特に、近年増加傾向にある、企業の機密情報や個人情報などを狙った標的型攻撃に対して、非常に有効な対策と言えるでしょう。ブルーワ・ナッシュ・モデルは、変化する状況に合わせて柔軟に対応できる、新しいセキュリティ対策として、今後ますます注目されていくと考えられます。
項目 | 内容 |
---|---|
モデル名 | ブルーワ・ナッシュ・モデル |
特徴 | 過去の行動記録に基づいて、情報へのアクセスをリアルタイムで調整 |
従来のアクセス制御との違い | – 従来:あらかじめ決められたルールに基づき、「許可」または「拒否」を二元的に判断 – ブルーワ・ナッシュ・モデル:ユーザーのアクセス履歴を記録し、その情報に基づいてアクセス権限を動的に変化 |
メリット | – 情報漏えいのリスクを大幅に低減 – 特に、標的型攻撃に対して有効 |
将来性 | 変化する状況に合わせて柔軟に対応できる新しいセキュリティ対策として注目 |
金融機関以外への応用
– 金融機関以外への応用
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、銀行や証券会社といったお金を取り扱う機関の情報保護の枠組みとして作られました。しかし、その考え方は、金融機関に限らず、様々な企業や組織で活用できる柔軟性を持っています。
特に、顧客の個人情報や企業秘密といった重要な情報を取り扱うコンサルティング会社や法律事務所では、ブルーワ・ナッシュ・モデルを取り入れることで、より強固な情報保護体制を築くことが期待できます。
例えば、顧客の相談内容や企業の財務状況といった機密性の高い情報は、適切に管理しなければ、情報漏えいや不正利用のリスクに晒されます。このようなリスクを最小限に抑えるためには、ブルーワ・ナッシュ・モデルで示される情報資産の重要度に応じた適切なアクセス制限や、情報の暗号化、従業員へのセキュリティ意識向上のための教育など、多層的なセキュリティ対策が必要となります。
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、あくまでも一つの考え方であり、全ての組織にそのまま適用できるわけではありません。しかし、その基本的な考え方を理解し、自社の事業内容やリスクに応じて適切な対策を講じることで、より安全な情報管理体制を構築することが可能になります。
対象 | 情報資産の例 | セキュリティ対策例 |
---|---|---|
コンサルティング会社 | 顧客の相談内容 | アクセス制限、情報の暗号化、従業員教育 |
法律事務所 | 企業の財務状況 | アクセス制限、情報の暗号化、従業員教育 |
まとめ
昨今、企業にとって、顧客や取引先などから預かった情報を適切に保護することは、事業を継続していく上で非常に重要となっています。情報漏えいなどのセキュリティ事故が発生すると、企業は社会的信頼を失墜させ、多大な損害を被ることになりかねません。
このような背景から、情報を適切に管理し、不正アクセスや情報漏えいなどの脅威から守る「情報セキュリティ」の重要性が高まっています。
情報セキュリティ対策として広く知られている考え方の一つに、「ブルーワ・ナッシュ・モデル」があります。これは、元々金融機関における情報セキュリティ対策として開発されたモデルですが、その考え方は、企業や組織の情報資産を守るための普遍的な枠組みとして、あらゆる組織に適用することができます。
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、情報へのアクセスを適切に制限することと、状況に応じてセキュリティ対策を柔軟に変えていくことの2つを柱としています。
まず、情報へのアクセス制限についてですが、これは、業務上、情報へのアクセスが必要な担当者にのみ、権限を与え、必要最低限の範囲でのみアクセスを許可するというものです。例えば、給与情報へのアクセスを、人事部の担当者だけに限定するといった対策が考えられます。
次に、動的な制御についてですが、これは、変化する状況に合わせて、セキュリティ対策を継続的に見直し、改善していくというものです。具体的には、最新の脅威情報や技術動向を把握し、必要に応じて、ファイアウォールの設定変更やセキュリティソフトのアップデートなどを行い、セキュリティレベルの向上を図ることが重要です。
ブルーワ・ナッシュ・モデルは、情報セキュリティ対策の基礎的な枠組みであり、組織は、このモデルを参考にしながら、自社の事業内容や規模、リスクの程度などに合わせて、具体的な対策を講じていく必要があります。
情報セキュリティは、企業の信頼と存続を左右する重要な要素です。一人ひとりが情報セキュリティの重要性を認識し、適切な対策を講じることで、安全な情報社会の実現に貢献していくことが求められます。
情報セキュリティ対策の考え方 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
アクセス制限 | 業務上、情報へのアクセスが必要な担当者にのみ、権限を与え、必要最低限の範囲でのみアクセスを許可する。 | 給与情報へのアクセスを、人事部の担当者だけに限定する。 |
動的な制御 | 変化する状況に合わせて、セキュリティ対策を継続的に見直し、改善していく。 | 最新の脅威情報や技術動向を把握し、必要に応じて、ファイアウォールの設定変更やセキュリティソフトのアップデートなどを行い、セキュリティレベルの向上を図る。 |