ソフトウェアサプライチェーンの安全確保: SLSA入門
セキュリティを知りたい
先生、「サルサ」って何か教えてください!セキュリティを高めるための知識って聞いたんですけど…
セキュリティ研究家
「サルサ」は、正式には『SLSA』と書いて、ソフトウェアの安全を守るための仕組みのことだよ。 例えば、みんなが使っているスマホアプリも、たくさんの部品を組み合わせて作られているんだけど、「サルサ」は、その部品が本物かどうか、悪意のある人が作った偽物ではないかを確かめるのに役立つんだ。
セキュリティを知りたい
なるほど!部品が偽物だと、どうなっちゃうんですか?
セキュリティ研究家
偽物の部品だと、アプリがうまく動かなくなったり、個人情報が盗まれたりする危険性があるんだ。 「サルサ」を使うことで、そうした危険を減らして、安全なソフトウェアを作ることができるんだよ。
SLSAとは。
安全なソフトウェア開発のための知識として、『SLSA(サルサ)』というものがあります。これは、”Supplychain Levels for Software Artifacts”の略称で、ソフトウェアの部品となるプログラムやデータの安全性を保つための仕組みです。
近年、SolarWinds社やCodeCov社のソフトウェアが不正に書き換えられる事件が起こり、特に誰でも使えるオープンソースソフトウェアの安全性に対する不安が高まりました。SLSAは、このような事件を受けて、Google社が開発しました。
SLSAを使うことで、ソフトウェア開発の過程で、プログラムやデータが不正に書き換えられることを防ぐことができます。また、ソフトウェアの部品や開発環境を保護し、ソフトウェアの安全性を保証することもできます。
SLSAは、成熟度に応じてレベル1から4までに分類されており、それぞれのレベルで安全性を高めるための具体的な方法が決められています。SLSAが提供するツールを、実際の開発工程に組み込んで自動化することで、SLSAの基準に沿った安全なソフトウェア開発が可能になります。
ソフトウェアサプライチェーンにおける脅威の増加
– ソフトウェアサプライチェーンにおける脅威の増加
近年のソフトウェア開発では、開発期間の短縮やコスト削減のために、オープンソースソフトウェア(OSS)や外部のライブラリを積極的に利用するのが一般的になっています。誰もが無料で使える便利なソフトウェアや、高度な機能を持つプログラム部品が簡単に手に入るようになったことは、ソフトウェア開発の進化に大きく貢献しました。
しかし、その一方で、こうした外部からソフトウェアを取り込む開発スタイルは、セキュリティ上の新たなリスクを生み出しています。外部のソフトウェアは、開発元が明確でない場合や、セキュリティ対策が不十分な場合があり、悪意のある第三者による改ざんや攻撃の対象となる可能性があります。もし、開発したソフトウェアに脆弱性を含むOSSが使われていた場合、そのソフトウェアを利用するユーザー全体に被害が及ぶ可能性もあるのです。
実際に、SolarWinds社やCodeCov社など、世界的に有名な企業がソフトウェアサプライチェーン攻撃の被害にあっています。これらの事件では、開発元が気づかないうちに、悪意のあるコードがソフトウェアに埋め込まれ、それが最終製品に混入してしまい、多くの企業や組織に影響が及ぶという、大きな被害が発生しました。
このようなソフトウェアサプライチェーン攻撃の脅威が増大していることを踏まえ、ソフトウェア開発企業は、自社で開発するソフトウェアだけでなく、そのソフトウェアに含まれるあらゆる部品や、開発に関わる全てのプロセスにおいて、セキュリティ対策を徹底する必要があると言えるでしょう。
メリット | デメリット | 対策 |
---|---|---|
開発期間の短縮、コスト削減。 高度な機能を持つプログラム部品が簡単に手に入る。 |
セキュリティ対策が不十分なOSSや外部ライブラリを利用することで、悪意のあるコードが埋め込まれる可能性がある。 | ソフトウェア開発企業は、自社開発ソフトウェアだけでなく、そのソフトウェアに含まれるあらゆる部品や、開発に関わる全てのプロセスにおいてセキュリティ対策を徹底する必要がある。 |
SLSA:ソフトウェアサプライチェーンの安全を守るフレームワーク
– SLSAソフトウェアサプライチェーンの安全を守る枠組み
近年、ソフトウェアサプライチェーンを狙った攻撃が増加しており、その対策は急務となっています。ソフトウェアサプライチェーンとは、ソフトウェアの開発から利用までの全工程に関わる組織、人、システム、プロセスを含む広範な概念です。SLSA(Supplychain Levels for Software Artifacts)は、このソフトウェアサプライチェーンの安全性を確保するための枠組みとして、Googleによって提唱されました。
SLSAは、「サルサ」と発音され、ソフトウェアの開発から利用までのあらゆる段階において、改ざんや攻撃から保護するための具体的な要件を定義しています。従来のセキュリティ対策では、開発者や利用者の責任範囲が曖昧になりがちでしたが、SLSAは、サプライチェーンに関わる全ての関係者に対して明確な責任範囲と実践すべきセキュリティ対策を提示している点が特徴です。
具体的には、SLSAはソフトウェアのビルドプロセス、ソースコード管理、依存関係の管理など、様々な側面からセキュリティリスクを体系的に分析し、それぞれに対応するレベルを設けています。レベルは段階的に設定されており、組織は自社の状況に合わせて段階的にセキュリティレベルを向上させていくことが可能です。
SLSAは、ソフトウェアサプライチェーンに関わる全ての人にとって有用なフレームワークです。開発者はSLSAに準拠することで、より安全なソフトウェアを開発することができます。また、利用者はSLSAに準拠したソフトウェアを利用することで、セキュリティリスクを低減することができます。このように、SLSAはソフトウェアサプライチェーン全体のセキュリティレベル向上に貢献することが期待されています。
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | ソフトウェアサプライチェーンの安全を確保するための枠組み |
目的 | ソフトウェアの開発から利用までのあらゆる段階における改ざんや攻撃からの保護 |
特徴 | – サプライチェーンに関わる全ての関係者に対して明確な責任範囲と実践すべきセキュリティ対策を提示 – ソフトウェアのビルドプロセス、ソースコード管理、依存関係の管理など、様々な側面からセキュリティリスクを体系的に分析 – 組織の状況に合わせた段階的なセキュリティレベル向上を可能にするレベル設定 |
メリット | – 開発者:より安全なソフトウェア開発が可能 – 利用者:セキュリティリスクの低減 – ソフトウェアサプライチェーン全体のセキュリティレベル向上 |
SLSAの4段階レベル
– SLSAの4段階レベル
ソフトウェアのサプライチェーンセキュリティを強化するための枠組みであるSLSAは、組織が段階的にセキュリティ対策を強化できるよう、成熟度レベルを4段階に分けて定義しています。組織は自身の状況に合わせて、段階的にレベルを上げていくことができます。
-レベル1ビルドの自動化と透明性の確保-
SLSAの最初のステップであるレベル1では、ビルドプロセスを自動化し、誰でも簡単に再現できるようにします。さらに、ソースコードの変更履歴を記録・管理することで、透明性を確保します。このレベルでは、最低限のセキュリティ対策を実施することで、サプライチェーンの可視化を向上させることが目的です。
-レベル2改ざん検知と依存関係の管理強化-
レベル2では、レベル1の対策に加えて、ビルドプロセスや成果物に対する改ざんを検知するための仕組みを導入します。具体的には、バージョン管理システムやビルドログの保護などが挙げられます。さらに、ソフトウェアの依存関係を明確化し、脆弱性対策を強化します。
-レベル3ビルド環境のセキュリティ強化とソースコードの検証-
レベル3では、ビルド環境のセキュリティを強化し、信頼できる環境でビルドを実行することが求められます。アクセス制御やセキュリティ監査などを実施することで、ビルド環境への不正アクセスや改ざんのリスクを低減します。また、ソースコードの真正性を検証し、悪意のあるコードの混入を防ぎます。
-レベル4サプライチェーン全体の信頼性確保-
最も厳しいレベルであるレベル4では、サプライチェーン全体で信頼できるルートを確立します。つまり、ソースコードの取得からソフトウェアのリリース、そして利用者への配布までのすべての段階において、セキュリティ対策を徹底し、あらゆる改ざんのリスクを最小限に抑えます。
SLSAのレベルは、段階的にセキュリティ対策を強化するためのガイドラインとなります。組織は、自社の置かれている状況やセキュリティリスクを評価し、適切なレベルを目指していくことが重要です。
レベル | 説明 | 具体的な対策例 |
---|---|---|
レベル1 ビルドの自動化と透明性の確保 |
ビルドプロセスを自動化し、誰でも簡単に再現できるようにします。誰でもソースコードの変更履歴を確認できるように、記録・管理して透明性を確保します。 | – ビルドツールの導入 – バージョン管理システムの利用 – ビルドログの記録 |
レベル2 改ざん検知と依存関係の管理強化 |
レベル1に加え、ビルドプロセスや成果物に対する改ざんを検知する仕組みを導入します。ソフトウェアの依存関係を明確化し、脆弱性対策を強化します。 | – バージョン管理システムの厳格なアクセス制御 – ビルドログへの電子署名の導入 – ソフトウェアコンポジション解析ツールの利用 |
レベル3 ビルド環境のセキュリティ強化とソースコードの検証 |
ビルド環境のセキュリティを強化し、信頼できる環境でビルドを実行します。ソースコードの真正性を検証します。 | – ビルド環境へのアクセス制御 – ビルド環境のセキュリティ監査 – ソースコードのデジタル署名検証 |
レベル4 サプライチェーン全体の信頼性確保 |
ソースコードの取得からソフトウェアのリリース、そして利用者への配布までのすべての段階において、セキュリティ対策を徹底し、あらゆる改ざんのリスクを最小限に抑えます。 | – サプライチェーン全体でのセキュリティ監査 – すべての成果物への電子署名 – 信頼できるルート証明書の利用 |
SLSA導入のメリット
– SLSA導入のメリット近年、ソフトウェアサプライチェーンを狙った攻撃が増加しており、その対策は組織にとって喫緊の課題となっています。サプライチェーン攻撃とは、開発や配布の過程でソフトウェアやその部品に不正な改変を加えたり、悪意のあるコードを埋め込んだりすることで、最終的に利用者のセキュリティを脅かす攻撃です。SLSA(Supply chain Levels for Software Artifacts)は、このようなサプライチェーン攻撃から組織を守るための強力な武器となります。SLSAは、ソフトウェアの開発から配布までの各段階におけるセキュリティ対策を体系的に整理し、具体的な対策をレベル分けして定義した枠組みです。SLSAを導入することで、組織はソフトウェアサプライチェーンのセキュリティを強化し、以下のメリットを得られます。* -改ざんと不正コード混入の防止- SLSAでは、コードの変更履歴を厳格に管理し、誰がいつどこを変更したかを追跡できる仕組みを構築します。これにより、悪意のある第三者による改ざんや不正なコードの混入を未然に防ぐことが可能となります。* -ソフトウェアの完全性の保証- SLSAは、ソフトウェアのビルドプロセスを保護し、成果物が改ざんされていないことを保証します。これにより、利用者はソフトウェアの提供元を信頼し、安心して利用することができます。* -セキュリティインシデントの影響範囲の最小化- 万が一、セキュリティインシデントが発生した場合でも、SLSAを導入することで、その影響範囲を最小限に抑えることができます。変更履歴を追跡することで、問題のあるコードを特定し、迅速に修正プログラムを配布することが可能となるためです。* -信頼性の証明- 組織は、SLSAに準拠していることを顧客やパートナーに示すことで、自社が提供するソフトウェアの信頼性の高さを証明できます。これは、競争の激しい市場において大きな優位性となります。このように、SLSAは組織のセキュリティ対策を強化し、信頼性を向上させるための強力なツールです。組織はSLSA導入を積極的に検討し、安全なソフトウェアサプライチェーンの構築に貢献していく必要があります。
メリット | 説明 |
---|---|
改ざんと不正コード混入の防止 | コードの変更履歴を厳格に管理し、誰がいつどこを変更したかを追跡できる仕組みを構築することで、悪意のある第三者による改ざんや不正なコードの混入を未然に防ぎます。 |
ソフトウェアの完全性の保証 | ソフトウェアのビルドプロセスを保護し、成果物が改ざんされていないことを保証します。 |
セキュリティインシデントの影響範囲の最小化 | 変更履歴を追跡することで、問題のあるコードを特定し、迅速に修正プログラムを配布することが可能となり、セキュリティインシデントの影響範囲を最小限に抑えます。 |
信頼性の証明 | 組織は、SLSAに準拠していることを顧客やパートナーに示すことで、自社が提供するソフトウェアの信頼性の高さを証明できます。 |
SLSAと開発パイプラインの統合
– SLSAと開発パイプラインの統合
ソフトウェアサプライチェーンのセキュリティを強化するSLSAは、開発プロセスに組み込むことで真価を発揮します。既存の開発パイプラインにSLSAを統合する方法を見ていきましょう。
まず、CI/CDツールと連携させることで、ビルドプロセスを自動化し、セキュリティチェックを組み込むことができます。例えば、コードの静的解析や依存関係の脆弱性スキャンなどを自動的に実行することで、問題を早期に発見し、修正することができます。
また、ソースコード管理システムと連携させることで、バージョン管理やアクセス制御を強化することも重要です。誰が、いつ、どのコードにアクセスしたかを追跡できるようにすることで、不正な変更を防ぎ、問題発生時の原因究明を容易にします。
さらに、SLSA対応のツールやサービスを活用することで、より効率的にフレームワークに準拠したソフトウェア開発体制を構築することができます。これらのツールは、SLSAの要件を満たすための機能を提供しており、開発者はセキュリティ対策に集中することができます。
重要なのは、SLSAを単なるチェックリストと捉えるのではなく、継続的に改善を続けるためのプロセスと捉えることです。組織は、開発プロセスや技術の変化に合わせてSLSAの要件を見直し、常に最新のセキュリティ対策を講じることが重要です。
SLSA 統合ポイント | 具体的な対策 | メリット |
---|---|---|
CI/CD ツールとの連携 | – ビルドプロセスの自動化 – 静的解析、依存関係の脆弱性スキャンなどを自動実行 |
– 問題の早期発見と修正 – セキュリティチェックの自動化による効率化と網羅性の向上 |
ソースコード管理システムとの連携 | – バージョン管理の強化 – アクセス制御の強化 (誰が、いつ、どのコードにアクセスしたかを追跡) |
– 不正な変更の防止 – 問題発生時の原因究明の容易化 |
SLSA 対応ツール・サービスの活用 | – SLSA 要件を満たす機能を提供するツールやサービスの導入 | – SLSA に準拠した開発体制の効率的な構築 – 開発者がセキュリティ対策に集中できる環境作り |