セキュリティ・バイ・デザイン:安全なシステム開発のために

セキュリティ・バイ・デザイン:安全なシステム開発のために

セキュリティを知りたい

「セキュリティを高めるための知識、『セキュリティ・バイ・デザイン』について教えてください。」

セキュリティ研究家

なるほど、『セキュリティ・バイ・デザイン』について知りたいのですね。簡単に言うと、建物を作る時と同じように、セキュリティ対策も後から付け足すのではなく、設計の段階からしっかりと組み込んでおきましょう、という考え方です。

セキュリティを知りたい

設計の段階から組み込むことのメリットは、どんなものがありますか?

セキュリティ研究家

いい質問ですね。後からセキュリティ対策を追加するよりも、最初からセキュリティを考慮して作る方が、コストを抑えられたり、より安全性の高いものが作れたりするんですよ。

セキュリティ・バイ・デザインとは。

安全性を高めるための考え方である『セキュリティ・バイ・デザイン』について説明します。セキュリティ・バイ・デザインとは、製品やシステムを作る計画段階から、安全対策をしっかり組み込んでおきましょうという考え方のことです。これは、内閣サイバーセキュリティセンターによって、「情報セキュリティを企画・設計段階から確保するための方策」として定義されています。具体的にどのような対策をすればよいのかは、「情報システムに係る政府調達におけるセキュリティ要件策定マニュアル(SBDマニュアル)」に書かれています。このマニュアルには、仕様書の書き方や対策の例などが載っています。令和4年7月には、このマニュアルが改訂されました。主な変更点は、政府機関などが使う際のセキュリティ対策基準や、デジタル化を進めるためのガイドラインの変更に合わせて、マニュアルの内容も見直されたこと、そして、政府機関でも利用が増えているクラウドサービスを安全に使うための対策をまとめた「クラウド設計・開発編」が新しく作られたことです。この改訂は、発注する側のセキュリティ要件の書き方が曖昧だったり、過不足があったりするのを防ぐこと、そして、クラウドサービスを使う上でのセキュリティ上の注意点をまとめることで、クラウドサービスのより安全な利用を促進することを目的としています。作る側も使う側も、開発の早い段階からセキュリティ対策を考えておくことで、結果として安全対策にかかる費用を抑えたり、長く使えるソフトウェアや機器を提供したりできるなどのメリットがあります。特に、セキュリティ・バイ・デザインの考え方に基づいて、共通化された安全対策を行い、組織として継続的にセキュリティリスクを管理することで、システムごとにバラバラだった安全対策や不十分なリスク管理を解消し、システム全体の安全性を向上させることができます。

セキュリティ・バイ・デザインとは

セキュリティ・バイ・デザインとは

– セキュリティ・バイ・デザインとは

情報システムやソフトウェア、製品などを開発する際、従来の手法では、セキュリティ対策は開発の最終段階や、場合によっては運用開始後に後から付け足しで行われることが少なくありませんでした。しかし、このような後付けのセキュリティ対策には、いくつかの問題点があります。

例えば、開発の後期になって重大なセキュリティ上の欠陥が見つかった場合、設計を大幅に見直す必要が生じ、多大な時間とコストがかかってしまう可能性があります。また、機能とセキュリティ対策がうまく統合されず、使いにくいシステムになってしまうこともあります。

そこで重要になるのが「セキュリティ・バイ・デザイン」という考え方です。セキュリティ・バイ・デザインとは、開発の初期段階からセキュリティを考慮し、システム設計にセキュリティ対策を組み込んでいくという考え方です。

具体的には、開発の要件定義の段階からセキュリティを考慮し、設計、実装、テスト、運用、保守の各段階においても、セキュリティ対策をしっかりと織り込んでいく必要があります。

セキュリティ・バイ・デザインは、後付けでセキュリティ対策をするよりも、安全なシステムを効率的に開発できるだけでなく、開発後のセキュリティリスクを低減できるというメリットもあります。

従来のセキュリティ対策 セキュリティ・バイ・デザイン
開発の最終段階や運用開始後にセキュリティ対策を行う 開発の初期段階からセキュリティを考慮し、システム設計にセキュリティ対策を組み込む
重大なセキュリティ上の欠陥が見つかった場合、設計を見直す必要があり、多大な時間とコストがかかる可能性がある 安全なシステムを効率的に開発できる
機能とセキュリティ対策がうまく統合されず、使いにくいシステムになってしまう可能性がある 開発後のセキュリティリスクを低減できる

具体的な取り組み

具体的な取り組み

– 具体的な取り組み

安全なシステムやソフトウェアを設計・開発するには、最初からセキュリティを考慮することが非常に重要です。
これを「セキュリティ・バイ・デザイン」と呼びますが、実際にどのような取り組みが必要なのでしょうか?

まず、開発の初期段階で「脅威モデリング」を実施することが重要です。
これは、システムが潜在的にどのような脅威にさらされる可能性があるのか、その影響はどの程度か、などを洗い出す作業です。
脅威を事前に予測し、対策を検討しておくことで、より安全なシステムを構築することができます。

また、セキュリティに配慮した設計ガイドラインを策定することも大切です。
ガイドラインには、パスワードの複雑性要件、アクセス制御のルール、暗号化の要件など、具体的なセキュリティ対策を盛り込む必要があります。
開発チーム全員がガイドラインを遵守することで、セキュリティレベルの統一化を図ることができます。

さらに、開発チームに対するセキュリティに関する教育も欠かせません。
セキュリティの重要性を理解し、最新の脅威や対策に関する知識を身につけることで、よりセキュアなシステム開発が可能になります。

重要なのは、設計の段階だけでなく、開発、テスト、運用、廃棄に至るシステムのライフサイクル全体を通して、セキュリティを考慮することです。
運用開始後も、脆弱性情報を収集し、システムに適切なセキュリティパッチを適用するなど、継続的なセキュリティ対策が必要です。

取り組み 内容
脅威モデリング 開発初期段階でシステムがさらされる可能性のある脅威を洗い出し、対策を検討する。
セキュリティ設計ガイドライン策定 パスワードの複雑性、アクセス制御、暗号化など、具体的なセキュリティ対策を盛り込んだガイドラインを策定する。
開発チームへのセキュリティ教育 セキュリティの重要性を理解させ、最新の脅威や対策に関する知識を習得させる。
ライフサイクル全体でのセキュリティ考慮 設計・開発だけでなく、テスト・運用・廃棄まで、システムのライフサイクル全体を通してセキュリティを考慮する。

メリットと効果

メリットと効果

– メリットと効果

システムやソフトウェア開発の段階からセキュリティを考慮する「セキュリティ・バイ・デザイン」には、多くの利点と効果が見込めます。

まず、開発の初期段階からセキュリティ対策を組み込むことで、後から対策を追加するよりもコストを抑えられます。開発の終盤で設計変更を余儀なくされると、大きな手戻りが発生し、その分費用や時間がかかってしまいます。開発の初期段階、設計の段階からセキュリティを考慮することで、このような無駄なコストや時間の発生を未然に防ぐことができるのです。

また、セキュリティ上の弱点や欠陥を減らすことができ、サイバー攻撃による被害を食い止める可能性が高まります。セキュリティ対策を後付けで行う場合、どうしてもシステム全体に目が行き届かず、思わぬところに抜け穴ができてしまうことがあります。しかし、設計段階からセキュリティを考慮することで、システム全体を強固なものにすることができ、攻撃による被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。

さらに、セキュリティの質が向上することで、システム全体の信頼性が高まると期待できます。セキュリティの脆弱性は、システムの信頼性を損なう大きな要因の一つです。セキュリティを強化することで、利用者は安心してシステムを利用できるようになり、ひいてはシステム全体の価値向上に繋がります。

メリット 効果
開発コスト削減 後からの対策追加より費用や時間の無駄を減らせる
セキュリティ上の弱点や欠陥の減少 システム全体を強固にし、サイバー攻撃による被害を最小限に抑える
セキュリティの質向上 システム全体の信頼性向上、利用者の安心感向上、システム全体の価値向上

クラウドサービスにおける重要性

クラウドサービスにおける重要性

近年、多くの会社で情報をインターネット上のサービスを通じて管理する形が増えてきています。このサービスは、従来のように会社独自でシステムを構築、運用するのに比べて、費用を抑えたり、柔軟にシステムを変更したりできるなどのメリットがあります。
しかし、このような便利なサービスでも、セキュリティ対策を怠ると、情報漏えいやサービスの妨害といった問題が起こる可能性があります。そのため、サービスを利用する段階からセキュリティを考慮することが非常に重要になります。

具体的には、サービスを提供する側がどのようなセキュリティ対策を行っているのかを事前に確認する必要があります。例えば、不正なアクセスを防ぐ仕組みや、問題が発生した場合の対応について、しっかりと説明しているかを確認する必要があります。
また、サービスを利用する側も、適切なセキュリティ対策を行う必要があります。具体的には、アクセスできる人を制限したり、情報を暗号化したりするなどの対策が考えられます。
このように、サービスを利用する段階からセキュリティを考慮することで、安全に安心してサービスを利用できるようになります。

項目 内容
サービス提供側の責任 – 不正アクセス対策
– 問題発生時の対応策
サービス利用側の責任 – アクセス制限
– 情報の暗号化

まとめ

まとめ

– まとめ現代社会において、情報システムは私たちの生活に欠かせないものとなっています。しかし、その利便性と引き換えに、情報漏えいやシステム障害といったセキュリティ上の脅威に日々晒されているという現実も存在します。このような脅威から大切な情報やシステムを守るためには、設計段階からセキュリティを考慮する「セキュリティ・バイ・デザイン」という考え方が重要です。従来のシステム開発では、機能の実装を優先し、セキュリティ対策は後回しになりがちでした。しかし、後からセキュリティ対策を追加しようとすると、システム全体の見直しが必要となり、多大な時間とコストがかかってしまいます。また、根本的な解決に至らず、脆弱性を残したまま運用せざるを得ないケースも少なくありません。セキュリティ・バイ・デザインは、システム開発の初期段階からセキュリティを考慮することで、より安全で信頼性の高いシステムを実現するアプローチです。具体的な方法としては、脅威モデリングの実施や、安全な設計・開発ガイドラインの遵守、セキュリティに関する教育などが挙げられます。セキュリティ・バイ・デザインは、開発者だけが意識すれば良いというものではありません。システムを利用する私たち一人ひとりも、セキュリティの重要性を認識し、セキュリティ・バイ・デザインを推進する製品やサービスを選択することが重要です。また、政府機関や企業は、セキュリティ・バイ・デザインの考え方を積極的に導入し、安全なデジタル社会の実現に向けて積極的に取り組んでいく必要があります。

従来のシステム開発 セキュリティ・バイ・デザイン
機能の実装を優先し、セキュリティ対策は後回し システム開発の初期段階からセキュリティを考慮
後からセキュリティ対策を追加 → 多大な時間とコスト より安全で信頼性の高いシステムを実現
根本的な解決に至らず、脆弱性を残したまま運用されるケースも 脅威モデリングの実施、安全な設計・開発ガイドラインの遵守、セキュリティに関する教育
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