時代遅れ?境界防御の限界とゼロトラスト

時代遅れ?境界防御の限界とゼロトラスト

セキュリティを知りたい

先生、「境界防護」ってよく聞くんですけど、具体的にどんなものなんですか?

セキュリティ研究家

そうだね。「境界防護」は、家の周りの塀のように、組織のネットワークを「内側」と「外側」に分けて、外側からの侵入を防ぐ考え方だよ。VPNやファイアウォールが、塀の門や監視カメラのような役割を果たすんだ。

セキュリティを知りたい

なるほど!家の塀と同じように考えてみたら分かりやすいですね!でも、最近は「境界防護」だけでは十分じゃないって聞いたんですけど、なぜですか?

セキュリティ研究家

いい質問だね!最近は、リモートワークが増えて、会社の外から仕事をする人が増えたよね?そうなると、どこが「内側」でどこが「外側」か分かりにくくなってしまうんだ。それに、家の外からだけでなく、家の中からも悪いことをする人がいるように、組織の内部の人間による不正アクセスも増えてきている。だから、「境界防護」だけでは完璧に守れないケースも出てきているんだよ。

境界防護とは。

会社の情報を守るための考え方の一つに、「境界防御」というものがあります。これは、会社のネットワークを、安全な「内側」と危険な「外側」に分けて、「内側」を守ることに重点を置く考え方です。これまで、会社のネットワークを守るやり方の多くは、VPNやファイアウォールといった技術を使って、この「内側」と「外側」の境界を固めることに力を入れてきました。しかし最近では、悪意のある攻撃が巧妙化したり、家で仕事をする人が増えたりしたことで、「内側」と「外側」の境界が曖昧になってきました。さらに、会社の情報が、会社のネットワークの外にあるクラウドサービスに置かれることも多くなり、「境界防御」だけでは対応しきれなくなってきています。例えば、「境界防御」は、会社のネットワークの「内側」で起こる不正行為を防ぐことはできません。そのため、新しい考え方として、「ゼロ・トラストモデル」が登場してきています。

境界防御とは

境界防御とは

– 境界防御とは企業や組織にとって、情報を守り、安全に運用していくことは非常に重要です。そこで、従来から多くの企業が採用してきたセキュリティ対策の一つに「境界防御」があります。境界防御とは、組織のネットワークを城壁で囲まれた城に例え、外部からの侵入を防ぐ対策です。城壁の外には悪意のある攻撃者がおり、城壁の内側には守るべき重要な情報資産があるとイメージしてください。この城壁の役割を担うのが、VPNやファイアウォールといった技術です。VPNは、インターネットなどの公共のネットワークを安全に利用するための仮想的な専用回線のようなものです。ファイアウォールは、外部からの不正なアクセスを遮断する、いわば城門の役割を果たします。従来、社内ネットワークと外部ネットワークは明確に区別されており、境界防御は有効な手段として機能してきました。しかし、近年ではテレワークの普及やクラウドサービスの利用など、働く場所や情報資産の保管場所が多様化しています。そのため、従来の境界防御だけでは十分なセキュリティ対策とは言えなくなってきています。境界防御は重要なセキュリティ対策ではありますが、過信は禁物です。変化する状況に合わせて、多層的なセキュリティ対策を組み合わせることが重要となってきています。

項目 説明
境界防御の概念 組織のネットワークを城壁で囲まれた城に例え、外部からの侵入を防ぐ対策
境界防御の技術例 – VPN:インターネットなどの公共ネットワークを安全に利用するための仮想的な専用回線
– ファイアウォール:外部からの不正なアクセスを遮断する、いわば城門の役割
境界防御の限界 – テレワークの普及やクラウドサービスの利用など、働く場所や情報資産の保管場所が多様化しているため、従来の境界防御だけでは十分なセキュリティ対策とは言えなくなっている。
今後の対策 境界防御は重要なセキュリティ対策だが、過信は禁物。変化する状況に合わせて、多層的なセキュリティ対策を組み合わせることが重要。

境界防御の限界

境界防御の限界

– 境界防御の限界

従来のセキュリティ対策では、組織のネットワーク境界にファイアウォールなどの防御壁を築き、外部からの侵入を防ぐことに重点が置かれていました。しかし、今日のビジネス環境は大きく変化し、従来のような境界防御だけでは十分な安全性を確保することが難しくなっています。

その理由の一つとして、クラウドサービスの普及が挙げられます。多くの企業が重要なデータをクラウド上に保存するようになり、データが組織のネットワーク境界の外に置かれるケースが増えました。従来型の境界防御では、クラウド上のデータに対する脅威への対応は困難です。

さらに、従業員が会社支給のパソコン以外にも、スマートフォンやタブレット端末など、さまざまなデバイスを業務で利用するようになりました。これらのデバイスが適切に管理されずに組織のネットワークに接続されると、セキュリティ上の脆弱性となる可能性があります。

また、標的型攻撃のように、巧妙化・悪質化するサイバー攻撃の手口に対しても、従来の境界防御だけでは限界があります。これらの攻撃は、従来のセキュリティ対策をすり抜けて、組織の内部に侵入を試みます。

このように、従来の境界防御中心のセキュリティ対策には限界があり、変化する状況に合わせて、より多層的で包括的なセキュリティ対策が必要とされています。

従来の境界防御の限界 詳細
クラウドサービスの普及 データが組織のネットワーク境界の外(クラウド上)に保存されるケースが増加し、従来型の境界防御では対応困難に。
多様なデバイスの利用 従業員が使用するスマートフォンやタブレット端末などが、適切に管理されずに組織のネットワークに接続されるとセキュリティリスクに。
サイバー攻撃の巧妙化・悪質化 標的型攻撃などは、従来のセキュリティ対策をすり抜け、組織内部への侵入を試みるため、境界防御だけでは限界。

リモートワークの増加

リモートワークの増加

ここ数年で、場所にとらわれずに働けるリモートワークが広く普及しました。この新しい働き方は多くの利点を生み出す一方で、企業のセキュリティ対策にとっては新たな課題となっています。

従来のセキュリティ対策は、企業のネットワーク境界に壁を築き、外部からの侵入を防ぐことに重点を置いてきました。しかし、従業員が自宅やコワーキングスペースなど、様々な場所から会社のネットワークにアクセスするようになると、この境界線が曖昧になってしまいます。

例えば、従業員が自宅の無線LANに接続して業務を行う場合、その無線LANのセキュリティ強度が会社のセキュリティレベルを左右することになります。もしも、従業員がセキュリティの甘い無線LANに接続してしまえば、悪意のある第三者に会社の情報にアクセスされてしまう可能性も出てきます。

このように、リモートワークの普及は、従来の境界防御の限界を露呈させています。もはや、社内と社外を明確に分けて防御するだけでは十分ではなく、従業員一人ひとりがセキュリティ意識を持ち、適切な対策を講じることが重要になってきていると言えるでしょう。

従来のセキュリティ対策 リモートワークにおけるセキュリティ課題
企業ネットワーク境界への壁構築
外部からの侵入を防ぐことに重点
従業員のアクセス場所の多様化 (自宅、コワーキングスペースなど)
境界線が曖昧になり、従来の防御が困難に
例: 社内LANの保護 例:自宅の無線LANのセキュリティ強度が、企業のセキュリティレベルに影響

サイバー攻撃の高度化

サイバー攻撃の高度化

– サイバー攻撃の高度化

近年、技術の進歩に伴い、サイバー攻撃の手法もますます巧妙化しています。従来のセキュリティ対策では太刀打ちできないほど、攻撃は高度化し、その脅威は増加の一途を辿っています。特に、従来型のセキュリティ対策の代表格とも言える、境界防御を容易に突破してしまうケースが増加している点は見逃せません。

境界防御とは、例えるならば城壁のように、外部からの侵入を防ぐための防御策です。しかし、サイバー攻撃は、まるで城壁の下をトンネルでくぐり抜けるように、あるいは、空から城壁を飛び越えるように、従来の防御策を迂回する手段を次々と生み出しています。

さらに、特定の組織を狙い撃ちにする標的型攻撃も増加しています。これは、いわば、城の構造や守備の弱点を事前に徹底的に調査し、周到な計画を立ててから攻撃を仕掛けるようなものです。標的型攻撃では、攻撃者は、対象となる組織の情報を時間をかけて収集し、その組織のシステムの脆弱性や、人の心理的な隙などを突いてきます。そのため、従来型のファイアウォールのような、画一的な防御策だけでは、防ぎきることが難しくなっています。

このような状況下では、従来の境界防御だけに頼るのではなく、多層的な防御体制を構築することが重要です。侵入されることを前提とした上で、万が一、攻撃が成功した場合でも、被害を最小限に抑えるための対策を講じておく必要があります。

従来のセキュリティ対策の課題 高度化したサイバー攻撃 対策
境界防御(城壁のようなイメージ)は、現代のサイバー攻撃に対しては突破されやすい。 – トンネルを掘るように、あるいは空から飛び越えるように、従来の防御策を迂回する
– 標的型攻撃:組織の情報を事前に調査し、脆弱性や人の心理を突く攻撃が増加
– 境界防御だけに頼らず、多層的な防御体制を構築
– 侵入されることを前提に、被害を最小限に抑える対策を講じる

ゼロトラストモデルの登場

ゼロトラストモデルの登場

近年、働き方の多様化やクラウドサービスの普及が進むにつれて、従来の境界防御型のセキュリティ対策では、十分な安全性を確保することが難しくなってきています。従来の「城と堀」に例えられるような、外部からの侵入を防ぐことに重点を置いた防御では、内部からの攻撃や、許可されたユーザーになりすました不正アクセスを防ぐことが困難なためです。そこで、このような変化に対応するため、近年注目されているのがゼロトラストモデルです。
ゼロトラストモデルとは、『何も信頼せず、全てを検証する』という原則に基づいたセキュリティ対策です。これまでのセキュリティ対策のように、社内ネットワークや特定の端末からのアクセスを信頼するのではなく、ネットワークの場所や接続元に関わらず、あらゆるアクセスに対して認証と認可を徹底します。具体的には、ユーザーやデバイスの信頼性を確認するための多要素認証、アクセス権限を必要最小限に絞り込むための役割に基づくアクセス制御、通信内容を暗号化するなどの技術を用いることで、より強固なセキュリティを実現します。ゼロトラストモデルを採用することで、仮に攻撃者がネットワークに侵入したとしても、重要な情報へのアクセスを阻止し、被害を最小限に抑えることができます。

項目 従来のセキュリティ対策 ゼロトラストモデル
概念 境界防御型
(城と堀)
何も信頼せず、全てを検証
アクセス制御 社内ネットワークや特定端末からのアクセスを信頼 ネットワークの場所や接続元に関わらず、認証と認可を徹底
具体的な対策例 – 多要素認証
– 役割に基づくアクセス制御
– 通信の暗号化
メリット 攻撃者がネットワークに侵入しても、被害を最小限に抑えることが可能

ゼロトラストへの移行

ゼロトラストへの移行

– ゼロトラストへの移行

従来のセキュリティ対策は、城と堀のように、外部からの侵入を防ぐことに重点を置いていました。しかし、現代の脅威は、内部からの不正アクセスや、サプライチェーン攻撃など、より巧妙化しています。もはや、境界の内側だから安全ということはありません。

そこで注目されているのが「ゼロトラスト」という考え方です。ゼロトラストとは、あらゆるアクセスを信頼せず、常に検証するというセキュリティモデルです。これは、社内ネットワークに接続しているデバイスであっても、アクセスするユーザーやデバイスの信頼性を確認し、必要最低限の権限のみを与えるというものです。

ゼロトラストへの移行は、従来のセキュリティ対策を根本から見直す必要があるため、容易ではありません。段階的に対策を進めていくことが重要です。まずは、多要素認証の導入が有効です。これは、パスワードに加えて、スマートフォンなどに送られてくる認証コードなど、複数の要素を組み合わせて本人確認を行うことで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。

次に、アクセス権限の適切な管理も重要となります。従業員一人ひとりの業務内容に応じて、アクセスできる情報やシステムを制限することで、万が一、不正アクセスが発生した場合でも、被害を最小限に抑えられます。

さらに、ログ分析の強化も必要不可欠です。誰が、いつ、どの情報にアクセスしたのかを記録し、分析することで、不正アクセスの兆候を早期に発見できるようになります。

ゼロトラストへの移行は、組織全体の意識改革が必要です。セキュリティ対策は、一部の担当者だけの問題ではなく、組織全体で取り組むべき課題であることを認識し、継続的な改善を心がけることが大切です。

従来のセキュリティ対策 ゼロトラスト
外部からの侵入を防ぐことに重点(城と堀)
境界の内側を安全とみなす
あらゆるアクセスを信頼せず、常に検証
接続元に関わらず、ユーザーやデバイスの信頼性を確認
アクセス制御:必要最低限の権限のみを与える
ゼロトラスト移行のステップ 内容
多要素認証の導入 パスワードに加えて、スマートフォンなどに送られてくる認証コードなど、複数の要素を組み合わせて本人確認を行う
アクセス権限の適切な管理 従業員一人ひとりの業務内容に応じて、アクセスできる情報やシステムを制限
ログ分析の強化 誰が、いつ、どの情報にアクセスしたのかを記録し、分析することで、不正アクセスの兆候を早期に発見
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