デジタル時代の物的証拠:ロカールの交換原理
- 犯罪捜査の基礎
20世紀初頭のフランスに、犯罪学の分野で名を馳せたエドモンド・ロカールという人物がいました。彼は犯罪捜査において極めて重要な原則を提唱しました。それは「あらゆる接触は痕跡を残す」というもので、後に「ロカールの交換原理」として広く知られるようになりました。
この原理は、犯人が犯行現場に侵入し、犯行に及ぶ過程で、必ず何かしらの痕跡を残すと同時に、犯行現場から何らかの痕跡を持ち去ってしまうという考えに基づいています。たとえどんなに周到に証拠を隠滅しようとしても、微細な繊維や髪の毛、土砂など、目に見えないものまで含めれば、完全に痕跡を消し去ることは不可能に近いのです。
例えば、犯人が現場に侵入する際に、泥の付いた靴で土間を歩けば、靴底の模様が土間に残りますし、逆に靴底には土間の土が付着します。また、犯人がドアノブに触れれば指紋が残る可能性がありますし、現場に髪の毛を落としてしまうかもしれません。これらの痕跡は、犯人と犯行現場を結びつける重要な証拠となり得ます。ロカールの交換原理は、現代の犯罪捜査においても重要な原則として、捜査の重要な指針となっています。