産業システムセキュリティの要: IEC 62443
- はじめにと現代社会において、工場や電力網、水道施設、交通機関など、私たちの生活に欠かせない社会インフラを支えているのが産業用オートメーションおよび制御システム(IACS)です。IACSは、これらの重要なインフラを24時間365日体制で監視し、制御することで、私たちの生活を支える重要な役割を担っています。しかし、近年、これらのIACSに対するサイバー攻撃の脅威が増大しており、社会全体にとって大きな問題となっています。かつては、IACSは外部ネットワークから隔離された閉鎖的な環境で運用されていましたが、近年では、運用効率の向上や遠隔監視の必要性などから、企業内ネットワークやインターネットに接続されるケースが増えています。 このような接続性の拡大は、サイバー攻撃の脅威にさらされる危険性を高めることになります。サイバー攻撃者は、金銭目的の犯罪者から、国家の支援を受けた高度な攻撃者まで、その目的や能力も多岐にわたります。攻撃者は、IACSの脆弱性を悪用し、システムの制御を奪ったり、重要なデータを盗み出したり、さらには、物理的な損害を与えることも可能です。例えば、電力網への攻撃は、広範囲にわたる停電を引き起こし、経済活動や人々の生活に深刻な影響を与える可能性があります。また、工場の生産ラインへの攻撃は、製品の品質低下や納期の遅延、さらには、工場の操業停止に追い込まれる可能性も考えられます。このように、IACSに対するサイバー攻撃は、私たちの社会や経済に甚大な被害をもたらす可能性があります。そのため、IACSのセキュリティ対策は、もはや一部の専門家だけの問題ではなく、社会全体で取り組むべき喫緊の課題といえるでしょう。