ネットワーク内部の脅威:ラテラルムーブメントとは

ネットワーク内部の脅威:ラテラルムーブメントとは

セキュリティを知りたい

「セキュリティを高めるための知識として、『ラテラルムーブメント』について教えてください。」

セキュリティ研究家

良い質問だね。『ラテラルムーブメント』は、泥棒が建物に侵入した後、目的の部屋にたどり着くまで、他の部屋を次々と移動して探すようなものなんだ。

セキュリティを知りたい

なるほど。侵入した後、目的を達成するために色々なところを探しまわるんですね。セキュリティを高めるにはどうすればいいのですか?

セキュリティ研究家

そうだね。それぞれの部屋に鍵をかけたり、監視カメラを設置したりして、泥棒が動き回れないようにする必要がある。システムも同じように、重要な情報へのアクセス制限や、不正なアクセスを検知する仕組みが必要なんだ。

ラテラルムーブメントとは。

ネットワークの安全を守るための大切な知識の一つに「水平展開」というものがあります。これは、悪意のある人が遠くからシステムに侵入する攻撃方法全体を指す言葉です。侵入した人が目的を達成するためには、ネットワークに入り込んだ後、必要な権限を不正に取得し、複数のシステムやアカウントを乗っ取って、情報を盗み見たり、システムを操作したりする必要があります。このような「水平展開」を成功させるために、攻撃者は様々な道具や盗み出したログイン情報などを駆使します。攻撃者の手口を集めた「MITRE ATT&CK」と呼ばれる情報源によると、「水平展開」に使われる技術には、遠隔操作サービスの悪用(SSH、RDPなど)、組織内部での情報収集、ファイル共有システム(SMBなど)を使ったネットワーク内のファイル探し、システム管理ツールの悪用(PsExecなど)、アカウント乗っ取りのための攻撃(パス・ザ・チケット攻撃、パス・ザ・ハッシュ攻撃など)などが挙げられています。

侵入後の動き:ラテラルムーブメントの概要

侵入後の動き:ラテラルムーブメントの概要

企業の安全を守る対策として、外部からの侵入を防ぐことは非常に重要です。しかし、侵入を完全に防ぐことは難しく、侵入された後の攻撃者の動きにも注意を払う必要があります。攻撃者は侵入に成功すると、その足場を基点に、まるで社内を自由に動き回るように、より重要な情報やシステムへアクセスしようとします。このような、ネットワーク内での水平的な移動を「ラテラルムーブメント」と呼びます。

攻撃者は、パスワードの使い回しや、システムの脆弱性といった弱点を利用し、権限の低いアカウントからより権限の高いアカウントへと、段階的にアクセス権を拡大していきます。そして最終的には、機密情報を含むデータベースや、重要なシステムの制御権限を奪い取ってしまう可能性もあります。

ラテラルムーブメントを防ぐためには、多層的な防御対策が必要です。例えば、強力なパスワードを設定することや、多要素認証を導入すること、ソフトウェアの最新状態を保つことなどが有効です。また、社員一人ひとりがセキュリティ意識を高め、不審なメールを開封しない、怪しいリンクをクリックしないなど、基本的な対策を徹底することも重要です。

攻撃者の動き 対策
侵入を足がかりに、社内ネットワークを水平に移動(ラテラルムーブメント)し、重要な情報やシステムへアクセスを狙う
  • 強力なパスワード設定
  • 多要素認証の導入
  • ソフトウェアの最新状態の維持
  • セキュリティ意識の向上(不審なメールの開封や怪しいリンクへのクリック回避など)

ラテラルムーブメントの目的

ラテラルムーブメントの目的

– 組織の奥深くを目指す横移動その目的とは?

悪意のある攻撃者にとって、組織内ネットワークを横断する動き(ラテラルムーブメント)は、最終的な目的を達成するための手段に過ぎません。では、彼らの真の狙いはどこにあるのでしょうか?

第一に、機密情報へのアクセスが挙げられます。顧客情報や企業秘密など、組織にとって価値の高い情報を探し出し、窃取することが目的です。

第二に、重要なシステムへのアクセス権を奪取することです。業務システムやサーバーなど、組織の活動に不可欠なシステムを標的にし、その制御権を掌握しようとします。システムが乗っ取られれば、業務が麻痺するだけでなく、金銭を要求されるなどの二次被害にも繋がります。

第三に、攻撃範囲の拡大です。ラテラルムーブメントによって足場を築き、他のシステムやネットワークへの侵入経路を探します。組織全体に被害を広げ、より大きな混乱を引き起こすことが目的です。

このように、ラテラルムーブメントは組織に深刻な被害をもたらす可能性を秘めています。攻撃者はあの手この手で、組織の防衛網をかいくぐろうと試みています。まずはその危険性を認識し、適切な対策を講じることが重要です。

攻撃者の目的 詳細
機密情報へのアクセス 顧客情報や企業秘密など、組織にとって価値の高い情報の窃取
重要なシステムへのアクセス権の奪取 業務システムやサーバーなど、組織の活動に不可欠なシステムの制御権を掌握し、業務麻痺や金銭要求などの二次被害を狙う
攻撃範囲の拡大 足場を築き、他のシステムやネットワークへの侵入経路を探し、組織全体に被害を拡大

ラテラルムーブメントで用いられる主な手法

ラテラルムーブメントで用いられる主な手法

企業ネットワークへの侵入に成功した攻撃者は、最終的な目的を達成するために、侵入した場所から他のシステムへアクセスを広げようとします。このような活動をラテラルムーブメントと呼びますが、そこで攻撃者は様々な技術を駆使します。これらの攻撃手法は、セキュリティ対策を講じる上で把握しておくべきものです。以下は代表的な手法と、その対策について解説します。

– -リモートサービスの悪用- SSHやRDPなど、リモートからシステムにアクセスするためのサービスは、設定に脆弱性があったり、認証が不十分であったりすると、攻撃者に悪用される可能性があります。例えば、初期設定のパスワードを変更せずに使用していたり、多要素認証が設定されていない場合、攻撃者は容易にシステムに侵入できてしまいます。こうした事態を防ぐためには、リモートアクセスサービスの利用を必要最小限に抑え、強力なパスワードを設定し、多要素認証を導入することが重要です。
– -ネットワーク共有の悪用- 企業内ネットワークで広く利用されているファイルサーバーや共有フォルダは、攻撃者にとって格好の標的となります。SMBプロトコルなど、ネットワーク共有で使われる技術には脆弱性が存在することがあり、攻撃者はそれを悪用してアクセス権を取得し、機密情報を探したり、マルウェアを拡散させたりします。
このような被害を防ぐには、ネットワーク共有のアクセス制御を適切に設定し、最新のセキュリティアップデートを適用することが重要です。
– -管理ツールの悪用- PsExecなど、システム管理者がリモートからシステムを操作するために利用する正規の管理ツールも、攻撃者によって悪用される可能性があります。攻撃者は、これらのツールを悪用することで、他のシステムにコマンドを送信し、制御を奪うことができます。管理ツールが悪用されるリスクを軽減するには、ツールの利用状況を監視し、必要最小限の権限で実行するように設定することが重要です。
– -資格情報の盗難- パス・ザ・チケット攻撃やパス・ザ・ハッシュ攻撃といった高度な攻撃手法を用いることで、攻撃者は、正規のユーザーになりすましてネットワークに侵入し、横展開を行います。これらの攻撃では、ユーザーの認証情報であるチケットやハッシュ値を盗み出すことが目的となります。こうした攻撃から身を守るためには、強力なパスワードを設定し、定期的に変更すること、多要素認証を導入すること、そしてセキュリティソフトを導入し、常に最新の状態に保つことが重要となります。

攻撃者の目的 詳細
機密情報へのアクセス 顧客情報や企業秘密など、組織にとって価値の高い情報の窃取
重要なシステムへのアクセス権の奪取 業務システムやサーバーなど、組織の活動に不可欠なシステムの制御権を掌握し、業務麻痺や金銭要求などの二次被害を狙う
攻撃範囲の拡大 足場を築き、他のシステムやネットワークへの侵入経路を探し、組織全体に被害を拡大

効果的な対策:多層防御の重要性

効果的な対策:多層防御の重要性

– 効果的な対策多層防御の重要性昨今、巧妙化するサイバー攻撃の脅威から組織を守るためには、一種類の防御策だけに頼るのではなく、多層的なセキュリティ対策を構築することが非常に重要です。これは、たとえ侵入者を完全に阻止できなくても、被害を最小限に抑えるために有効な対策です。まず、組織内のネットワークを複数の区画に分割する「ネットワークのセグメント化」が有効です。これは、仮に一部の区画が攻撃を受けても、他の区画への影響を遮断し、被害の拡大を防ぐことができます。次に、システムやデータへのアクセスを厳格に管理する「アクセス制御の強化」が必要です。ユーザーに対して、業務に必要な最小限の権限のみを付与し、特に重要なシステムへのアクセスは厳しく制限します。さらに、パスワードに加えて、スマートフォンアプリや生体認証などを組み合わせた「多要素認証」を導入することで、不正アクセスのリスクを大幅に低減できます。また、「セキュリティツールの導入」も不可欠です。侵入検知システム(IDS)やセキュリティ情報イベント管理システム(SIEM)といったツールを活用することで、ネットワーク上の怪しい動きをリアルタイムで検知し、迅速な対応を可能にします。そして、セキュリティ対策においては、技術的な対策だけでなく、従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが非常に重要です。そのため、フィッシング詐欺や怪しいメールの見分け方など、実践的なセキュリティ教育を定期的に実施し、従業員の意識向上を図る必要があります。このように、多層的なセキュリティ対策を講じることで、組織はサイバー攻撃から重要な情報資産を守り、安全なビジネスの継続を実現できます。

対策 説明
ネットワークのセグメント化 組織内のネットワークを複数の区画に分割し、仮に一部が攻撃されても他の区画への影響を遮断する。
アクセス制御の強化 ユーザーに対して、業務に必要な最小限の権限のみを付与し、重要なシステムへのアクセス制限を強化する。
多要素認証 パスワードに加えて、スマートフォンアプリや生体認証などを組み合わせることで、不正アクセスのリスクを低減する。
セキュリティツールの導入 侵入検知システム(IDS)やセキュリティ情報イベント管理システム(SIEM)といったツールを活用し、怪しい動きをリアルタイムで検知し、迅速な対応を可能にする。
従業員のセキュリティ意識向上 フィッシング詐欺や怪しいメールの見分け方など、実践的なセキュリティ教育を定期的に実施する。
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