APIの脆弱性『BOLA』とは?その脅威と対策を解説
セキュリティを知りたい
先生、「壊れたオブジェクトレベル認可」って、なんだか難しそうな名前ですね…。一体どういう意味ですか?
セキュリティ研究家
そうだね。「壊れたオブジェクトレベル認可」は、Webサイトの仕組みの一部に問題があることを表しているんだ。ウェブサイトには、誰がどの情報を見たり、変更したりできるかを管理する機能があるんだけど、この機能が壊れている状態を指すんだ。
セキュリティを知りたい
機能が壊れている…?具体的には、どうなるんですか?
セキュリティ研究家
例えば、本来なら君が見ることのできない他人のテストの点数が、壊れた機能のせいで見えてしまうかもしれない。これは一例だけど、本来アクセスできない情報にアクセスできてしまう状態なんだよ。
BOLAとは。
ウェブサイトやアプリを不正利用から守るための知識の一つに、「壊れたオブジェクトレベル認可」というものがあります。これは、ウェブサイトやアプリが、ファイルなどの情報に誰がアクセスできるかを適切に管理できていない状態を指します。この状態は、世界中でウェブサイトの安全性を高める活動をしているOWASPという団体が発表している、アプリの脆弱性トップ10にも含まれる、深刻な問題です。
本来、ウェブサイトやアプリは、正しい利用者だけが自分の情報を見たり変更したりできるように、厳重に管理されているべきです。しかし、この管理がしっかりできていない場合、悪意のある第三者が本来アクセスできない情報を盗み見たり、改ざんしたりできてしまいます。悪意のある第三者は、ほんの少しウェブサイトやアプリに送る情報をいじるだけで、簡単にこの脆弱性を突くことができてしまうため、大変危険です。
この問題を防ぐためには、ウェブサイトやアプリを作る段階で、誰がどの情報にアクセスできるかをしっかりと管理する仕組みを組み込んでおくことが重要です。
APIにおける深刻な脆弱性、BOLA
近年、インターネット上で様々なサービスが利用できるようになるにつれて、多くの情報を扱うアプリケーションの重要性が高まっています。それと同時に、アプリケーションの安全性を脅かす攻撃も増加しており、その対策が急務となっています。
アプリケーションは、外部とのデータのやり取りを行うためにAPIと呼ばれる仕組みを利用しています。このAPIは、いわばアプリケーションの窓口のようなものであり、適切に管理しなければ、攻撃者に悪用され、情報を盗み見られる可能性があります。
APIにおける脆弱性の一つとして、「オブジェクトレベル認可の欠陥(BOLA)」と呼ばれるものがあります。これは、本来アクセスを許可されていないはずのデータに、攻撃者が不正にアクセスできてしまうという、非常に危険な脆弱性です。
例えば、あるショッピングサイトのAPIにおいて、利用者Aさんが自分の注文履歴を見ることができる機能があるとします。このとき、BOLAが存在すると、攻撃者はAさんのアカウント情報などを不正に操作することで、本来アクセスできないはずのBさんやCさんの注文履歴まで盗み見ることができてしまう可能性があります。
このように、BOLAは、個人情報の漏洩やサービスの不正利用など、甚大な被害をもたらす可能性があります。そのため、APIの開発者はもちろんのこと、利用者もBOLAの脅威を認識し、対策を講じることが重要です。
脆弱性 | 概要 | 例 | リスク |
---|---|---|---|
オブジェクトレベル認可の欠陥(BOLA) | APIにおいて、本来アクセスを許可されていないはずのデータに、攻撃者が不正にアクセスできてしまう脆弱性。 | ショッピングサイトで、Aさんのアカウント情報などを操作することで、BさんやCさんの注文履歴を盗み見ることができる。 | 個人情報の漏洩、サービスの不正利用など。 |
オブジェクトレベル認可とは
– オブジェクトレベル認可とは
データへのアクセスを必要最小限に制限することは、情報セキュリティにおいて非常に重要です。従来のシステムでは、ユーザーの役割や所属グループに基づいてアクセス権を設定することが一般的でした。しかし、これだけでは、同じグループに所属しているユーザー間でも、アクセス権に差を設けることが難しく、セキュリティ上のリスクが残ります。
そこで、近年注目されているのが「オブジェクトレベル認可」です。これは、ファイルやデータベースのレコードといった、個々のデータ(オブジェクト)に対して、ユーザーごとにアクセス権を設定できる仕組みです。
例えば、顧客情報のデータベースがあるとします。従来のシステムでは、営業部のユーザーは全員、顧客情報データベースへのアクセス権を持っていたかもしれません。しかし、オブジェクトレベル認可を導入すると、個々の顧客情報に対して、担当営業のみがアクセスできるように制限できます。
このように、オブジェクトレベル認可は、従来のアクセス制御よりもきめ細かいアクセス制御を可能にするため、セキュリティリスクを大幅に減らすことができます。また、個人情報保護の観点からも、非常に有効な手段と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
従来のアクセス制御 | – ユーザーの役割や所属グループに基づいてアクセス権を設定 – セキュリティ上のリスクが残る可能性あり |
オブジェクトレベル認可 | – 個々のデータ(オブジェクト)に対して、ユーザーごとにアクセス権を設定 – きめ細かいアクセス制御が可能 – セキュリティリスクを大幅に減らす – 個人情報保護の観点からも有効 |
BOLAの脅威:認可の欠陥が招くリスク
– BOLAの脅威認可の欠陥が招くリスクウェブサイトやアプリケーションは、情報を守るために様々な対策を講じています。その中でも、アクセス制御は重要な要素の一つです。アクセス制御には「認証」と「認可」の二つの段階があり、まず「あなたは本当にあなたですか?」という確認(認証)を行った上で、「あなたはこの情報にアクセスする権利がありますか?」という確認(認可)を行います。
BOLA(Broken Object Level Authorization)は、この認可の段階に脆弱性が存在する場合に発生する脅威です。ウェブサイトやアプリケーションは、ブログの記事、写真のデータ、ユーザーの情報など、様々なデータを「オブジェクト」として管理しています。BOLAは、このオブジェクトへのアクセス許可が適切に行われていないために起こります。
例えば、あるユーザーAさんが閲覧できる写真のデータがあるとします。この時、システムは「写真データ123番はユーザーAさんが閲覧可能」という情報を保持しているはずです。しかし、もしもシステムに欠陥があり、この認可の確認が正しく行われなかった場合、どうなるでしょうか?攻撃者は、写真データの番号を「123」から「124」などに変えるだけで、本来アクセスできないはずの他のユーザーのデータにアクセスできてしまう可能性があります。
このように、BOLAは攻撃者に不正なデータの閲覧、改ざん、削除などを許してしまう危険性があります。対策としては、アプリケーションの設計段階から適切な認可の仕組みを組み込むことが重要です。また、セキュリティテストを実施し、認可に関する脆弱性が無いかを確認することも必要です。
脅威 | 内容 | リスク | 対策 |
---|---|---|---|
BOLA (Broken Object Level Authorization) | Webサイトやアプリケーションにおける、オブジェクトレベルの認可の欠陥。アクセス制御の「認可」に脆弱性があり、本来アクセスできないはずのデータにアクセスできてしまう。 |
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攻撃者の手口:巧妙化するBOLAの悪用
– 攻撃者の手口巧妙化するBOLAの悪用
ビジネスロジック攻撃(BOLA)は、システムの脆弱性ではなく、アプリケーションの設計上の欠陥や設定ミスを突いた攻撃です。近年、このBOLAを悪用する手口はますます巧妙化しており、企業や組織にとって大きな脅威となっています。
攻撃者は、APIのリクエストに含まれるパラメータを操作することで、本来であれば拒否されるべき操作を不正に実行しようと試みます。例えば、APIのリクエストに含まれるユーザーIDを、本来アクセス権のない別のユーザーIDに改ざんすることで、機密情報を含むデータの不正取得を試みます。また、攻撃者は、システム内部で使用されるIDや隠しパラメータなどを推測し、APIリクエストに不正な値を挿入することで、システムの挙動を操作しようとします。
このような巧妙化するBOLAの脅威からシステムを守るためには、入力値検証の強化やAPIへのアクセス制限などの対策が重要です。特に、ユーザーからの入力値を厳密にチェックし、想定外の値が送信された場合はエラーとすることで、多くの攻撃を防ぐことができます。また、APIへのアクセス制限には、IPアドレス制限やAPIキーによる認証などが有効です。
BOLAは、システムの脆弱性を突く攻撃とは異なり、その対策にはアプリケーションの設計段階からの考慮が必要です。しかし、攻撃の手口は日々進化しているため、常に最新の情報を収集し、システムに適切な対策を施していくことが重要です。
攻撃の種類 | 手口 | 対策 |
---|---|---|
ビジネスロジック攻撃(BOLA) | APIリクエストのパラメータを操作 – ユーザIDの改ざん – システム内部ID、隠しパラメータの推測と不正値の挿入 |
入力値検証の強化 – 想定外値のエラー処理 APIへのアクセス制限 – IPアドレス制限 – APIキーによる認証 |
BOLAからシステムを守る対策
近年、ウェブアプリケーションへの攻撃が増加する中で、アプリケーションのビジネスロジックを狙った攻撃「BOLA(Business Logic Attacks)」の脅威も高まっています。BOLAは、アプリケーションの設計や実装の脆弱性を突くことで、不正な操作やデータの窃取などを実行する巧妙な攻撃です。
BOLAからシステムを守るためには、アプリケーションの開発段階からセキュリティ対策を施すことが重要です。 特に、データへのアクセスを制御する「オブジェクトレベル認可」を適切に実装し、すべてのAPIリクエストに対して、アクセス権限を持つユーザーからのリクエストかどうかを厳密にチェックする必要があります。
また、ユーザーが入力した値の検証も重要です。APIリクエストに含まれるパラメータが、想定外の値や形式でないかを厳密にチェックすることで、攻撃者が悪意のあるコードを埋め込んだり、システムの挙動を操作することを防ぐことができます。
さらに、開発後も定期的なセキュリティテストを実施し、潜在的な脆弱性を早期に発見・修正することが重要です。 システムのソフトウェアやライブラリを最新の状態に保ち、セキュリティパッチを適用することで、既知の脆弱性を悪用した攻撃からシステムを守ることができます。
BOLAは、その特性上、従来のセキュリティ対策では検知・防御が困難な場合があり、多層的な対策が必要となります。開発者、運用者ともに、BOLAの脅威を認識し、適切な対策を講じることで、安全なシステム構築を目指しましょう。
BOLA対策 | 説明 |
---|---|
オブジェクトレベル認可 | データへのアクセスを制御し、アクセス権限を持つユーザーからのリクエストかどうかを厳密にチェックする。 |
入力値検証 | APIリクエストに含まれるパラメータが、想定外の値や形式でないかを厳密にチェックする。 |
定期的なセキュリティテスト | 潜在的な脆弱性を早期に発見・修正する。 |
システムのアップデート | ソフトウェアやライブラリを最新の状態に保ち、セキュリティパッチを適用する。 |
開発者と利用者の意識改革が必要
– 開発者と利用者の意識改革が必要
昨今、アプリケーションの連携を支えるAPIの利用が急増する一方で、その脆弱性を突いた攻撃であるBOLA(Broken Object Level Authorization)の脅威が増大しています。BOLAの脅威を効果的に軽減するためには、APIを開発する側だけでなく、それを利用する側のセキュリティ意識向上も必要不可欠です。
APIの開発者は、システム開発の段階からセキュリティを考慮する、いわゆる「セキュアコーディング」の原則を遵守し、最新のセキュリティ対策をAPIに実装することで、攻撃のリスクを最小限に抑えることができます。具体的には、アクセス制御の強化や入力値の検証、暗号化などの対策が挙げられます。しかし、開発側の努力だけでは、BOLAの脅威を完全に排除することはできません。
APIの利用者もまた、セキュリティ意識を高める必要があります。利用するAPIのセキュリティガイドラインを熟読し、適切な認証・認可の設定を行うことはもちろんのこと、不審なアクセスを検知した場合には速やかに報告するなど、自らが利用するシステムの安全性を守るための積極的な行動が求められます。
開発者と利用者が協力し、セキュリティ対策を強化することで、はじめてBOLAをはじめとする様々なサイバー攻撃の脅威からシステムを守り、安全なデジタル社会を実現できるのです。
役割 | 対策 |
---|---|
API開発者 | – セキュアコーディングの原則遵守 – アクセス制御の強化 – 入力値検証の実装 – 暗号化などの対策実装 |
API利用者 | – セキュリティガイドラインの熟読 – 適切な認証・認可設定 – 不審なアクセスの検知と報告 – 自ら利用するシステムの安全性を守る行動 |